授業実践

【水産業のさかんな地域】東広島の水産業,若返り大作戦!

2023.07.11
目次
この授業実践の関係者

授業実施者:草原和博
授業補助者:各小学校での授業担当教員
大浦鮮魚店からの中継:川本吉太郎
学校技術支援担当(東広島市内小学校):海老名和華,大岡慎治,國重和海,近藤郁実,中嶌千紗
事務局機器担当①(広島大学):草原聡美,髙須明根
事務局機器担当②(八本松小学校):田中崚斗,山本亮介,吉田純太郎

2023年7月11日,東広島市内小学校3校5学級(木谷小学校,志和小学校,八本松小学校)の5年生(165名)が参加し,「水産業」をテーマとする遠隔授業を実施しました。高齢化が進み,売り上げも減少してきた安芸津の水産業へ改善策を提案する活動を通じて,産業を豊かにする生産・流通・消費の相互作用について児童らは理解を深めました。

授業は3段階で展開していきました。まず導入部は,問題意識を共有し,学習課題を設定するパートです。
初めに,安芸津だけでなく日本全国で魚介類の生産・消費が減少している資料が示されました。日本では肉の消費量が増加する一方で魚介類の消費量が減少しているため,魚介類の生産量も減少していることを児童らが認識します。その理由を教科書で調べると,①環境が変化したこと,②魚の輸入が増えたこと,③魚介類を食べなくなったことだと児童らは認識します。
次に,安芸津で水産業を営む大浦さんのインタビューが示されました。大浦さんが水産業を営む中で困っていることを語ります。①水産業では高齢化が進み(一番若い人で70代),働き手が減ってきている,②水産業だけでは生活ができないので,若い人も漁師になろうとしないという苦労が語られることで,魚介類の生産量が減少している理由が働き手の減少であることを児童らは認識しました。
この働き手の課題をもつ安芸津の水産業を,どのように解決できそうかを,児童らは考えました。「安芸津の水産業に未来はあるか」と発問すれば,多くの児童は「ある!」と言います。しかし,「ない!」という児童に理由をきくと「若い人が漁師にならないから」と言います。
以上の活動から,2時間を貫く学習課題として「安芸津の強みを生かして,漁業「わか返り作戦」を提案しよう!」が導かれました。

展開部は,安芸津の水産業に改善策を提案するために,全国で行われている水産業の生産・流通・消費の工夫を認識するパートです。
まず,3つのグループに分かれて,生産・流通・消費の工夫を調べていきます。
生産の工夫を調べるグループは,ブランド化を調べていきます。広島県のレモンハマチや大分県の関アジ・関サバを事例に,どのように魚をブランド化しているか,ブランド化すると何が良いのかを児童らは認識します。
流通の工夫を調べるグループは,効率的な輸送を調べていきます。二酸化炭素量を増やした水の中に魚を入れることで魚を寝かせ,小さな面積でより多くの魚を運ぶ工夫を事例に,魚の運ぶ際に生じる問題は何か,どのように問題を克服しているか,効率的に魚を運ぶことで何が良いのかを児童らは認識します。
消費の工夫を調べるグループは,消費者を絞った販売戦略を調べていきます。海外の(浄化していて一口大のカキが好まれる)ニーズに合わせて販売者が販売方法を工夫している事例を通して,どのように販売方法を工夫できるか,販売方法を工夫すると何が良いのかを児童らは認識します。
次に全体でそれぞれのグループの学びを共有します。この活動では生産・流通・消費を工夫する方法を児童らは認識します。その後安芸津の水産業がもつ課題を解決するためには,どの工夫が使えそうかを考えます。児童らはそれぞれの工夫を踏まえて,安芸津町の水産業「若返り大作戦」を立てます。ここで児童らは「ドローンやロボットを使って効率的に魚を取る・運ぶ」といった「若返り作戦」を提案します。

終結部は,大浦さんや大学の先生に提案を聞いてもらうパートです。
まず大浦さんは,児童らの提案を聞き,どの提案が今後の水産業で活用できそうかを答えてくださりました。ドローンで魚を取るような水産業となれば,働き手の減少問題を解決できると評価してくださりました。
一方で,経済に詳しい専門家として登場した川口准教授(広島大学)は,その提案を実現するためにはお金がかかることを教えてくださりました。安芸津町の水産業を若返らせる作戦を実行するために,お金を集める必要があることを認識した児童らは,自分たちの提案を実現するための改善策を考えていました。

この授業の山場は,異なる学校の児童らが一つのグループになり,安芸津の水産業を救う改善策を考えるところにありました。生産・流通・消費の工夫を考える中で,なぜ生産・流通・消費を工夫すると良いのか,どのように生産・流通・消費を工夫すれば良いのかを,動画や記事を見ながら考えます。話し合いの中で,生産・流通・消費を工夫することの良さに関する多様な解釈を児童らは発見し,生産・流通・消費の工夫のメリットを多面的に認識することができたと考えられます。
毎年・毎月の実践の中で得られる成果を活かして,今後も授業計画・実践のアップデートを重ねてまいります。

この記事を書いた人
SIP staff
三井・川本・宇ノ木・神田

「デジタル・シティズンシップ・シティ:公共的対話のための学校」プロジェクトメンバーである三井・川本・宇ノ木・神田が更新しています! ぜひ、本記事を読んだ感想や疑問・コメントをお寄せください!