指導案・教材・YouTube動画
1.授業の概要
2026年7月16日(木),北海道・広島県・鹿児島県の中学校5校学6学級,計124名が参加し,「北海道DCC企画」の第4回授業が実施されました。
今回の授業のテーマは,「私たちがつくるこれからの未来:「じゃんけん」や「くじ引き」は公平か?」でした。本授業では,「対立と合意」「効率と公正」という「現代社会を捉える見方・考え方」を働かせながら,身近な学校生活で経験してきた物事を決める方法,地域の物事を決める方法について探究しました。
授業の全体進行は北海道教育大学釧路校の玉井慎也講師,各教室の進行は各学級の担任が務めました。また,釧路市マーケティング戦略室が運営している「KUSHIRO BRANDING PROJECT」(https://kushiro-branding.com)の関係者に「小さな熟議民主主義の実践者」としてゲスト出演いただきました。御礼申し上げます。
2.導入:学校ではどんな物事をどう決めている?
導入では,まず,学校で物事を決める場面・方法について各学級でリストアップし,「対立と合意」を視点に物事の決め方を類型化しました。
・(春採中1組)席替えの時は先生が決める!
・(春採中2組)音楽祭で歌う曲決めは多数決で決める!
・(山花中)生徒会選挙は多数決!
・(甲田中)運動会の組決めはくじ引き,掃除場所はじゃんけんで決める!
・(手々中)遠足のレクは多数決,委員会の委員長決めは立候補!
次に,「じゃんけんやくじ引きは,物事を決める方法として良い決め方だ!・・・賛成?反対?」を問うた事前アンケートの結果として,賛成派が6割ほどだったことを確認しました。
続けて,5つのシチュエーションで「〇〇をくじ引きで決めることに賛成?反対?」という内容のアンケート①に答えました。そして,アンケート①の結果から,シチュエーションによって「くじ引き」で決めることが良い場面とそうではない場面があるという仮説を引き出しました。
その後,仮説を掘り下げるために,教科書を確認しながら,「効率と公正」,特に「結果の公正さ」「機会の公正さ」「手続きの公正さ」という3つの「公正さ」を概念化し,じゃんけんやくじ引きの利点と欠点を交流しました。
・(春採中2組)くじ引きは,効率かつ公正な決め方なのではないか!
・(山花中)じゃんけんは,効率的ではないけど,機会の公正さはある決め方なのではないか!
こうした仮説を参加校で検証していく遠隔授業であることを確認した上で,本時の学習課題「私たちの未来を「くじ引き」で決める方法は,よい方法と言えるか?」が提示されました。


3.展開1:国や自治体の大切な物事の決め方は?
展開1では,国や自治体が大切な物事を決める際,くじ引きを採用している例として,裁判員制度や気候市民(区民)会議の概要を確認した後,くじ引きが採用されている理由を「効率と公正」の視点から探究しました。
その後,釧路市で実施されている「KUSHIRO BRANDING PROJECT」の概要を確認し,担当者にインタビューしたいことを「効率と公正」の視点から考え,アンケート②に答えました。
・どうしてくじ引きを採用したのですか?小学生や中学生も選ばれますか?
・釧路をブランド化していくために効率や公正で工夫・意識している点はありますか?
・選ばれた市民の人たちは,具体的にどんな活動をするのですか?
4.展開2:自分たちのまちのキャッチコピーを作るとしたら?
展開2では,アンケート②で答えた質問をもとに,「KUSHIRO BRANDING PROJECT」を運営している釧路市マーケティング戦略室の長崎さんにインタビューし,コメントをいただきました。
・(手々中)どうして行政やアドバイザーだけでなく,市民の意見を取り入れているのですか?
→釧路市のブランドを行政が一方的に決めるのではなく,様々な団体や市民の声を取り入れながら,みんなが納得するものを考えていきたいからです。
・(甲田中)プロジェクトでは,どれくらいの時間をかけて話し合いをしているのですか?
→市民ワークショップを4回開いて,約半年かけて話し合いをしています。
・(洞爺中)プロジェクトを通して,新しく決まったことはありますか?
→具体的にはこれから決めていきます。この取り組みが成功すれば,釧路市の名が広まると思っています。
・(山花中)どうやって住民の意見を取り入れているんですか?
→市民ワークショップを4回開いて,釧路市のキャッチコピーやロゴの土台になる話し合いをしているよ。市民ワークショップのメンバー以外からも,アンケートで声を集めているよ。
・(春採中2組)くじ引きで選んだ市民には,どのような活動をしてもらっているんですか?
→選ばれたくじ引き市民やワークショップのメンバーには,釧路市について宣伝・情報発信して
もらいます。
・(春採中1組)市民の選び方は色々あったと思うが,どうしてくじ引きを選んだのですか?私は「効率」を重視したのだと思ったのですが,どうですか!
→多様な市民の意見を取り入れたいと思い,効率の良さと機会の公正さがある「くじ引き」を用いて市民ワークショップのメンバーの一部を決めようと思いました。


インタビューの後,長崎さんからプロジェクトのねらいについて解説をいただきました。
・釧路市は釧路市・阿寒町・音別町が合併してできた都市で,幅広い年齢や性別の方が暮らしている。そのため,居住地区,年齢,性別が偏らないように,プロジェクトに参加する市民を選んだ。
・プロジェクトには,くじ引きで選ばれた「くじ引き市民」だけでなく,セミナー参加者などの「関心が高い市民」,移住者などの「外からの目線を持つ市民」,地域おこし協力隊などの「地域を盛り上げる市民」,釧路市役所などの「地方自治体」が参加しており,多様な目線から話し合いを進めている。
・プロジェクトを通して,釧路市の良さを再発見してほしい。


その後,自分たちのまち,参加校のまちの特色を,キャッチコピーで表現し,くじ引きで選ばれた各学級の代表3名が,ブレイクアウトルームで発表した後,ルームごとに議論しました。
・湿原と夕日といえば釧路市!
・世界遺産が2つもある街,洞爺湖町!
・ハブを見るなら徳之島!


ブレイクアウトルームでは.市民という「ウチの目線」と他のまちからの「ソトの目線」で議論が進みました。たった10分という限られた時間の中で,ルーム1では考えた理由をお互いにじっくり聞き拙速に結論づけない「(機会の)公正さ」,ルーム2では全員の意見を出してから共通点をまとめる「効率性」を重視した議論が展開され,ルームごとに違いが見られました。
その後,議論の様子を見ていた長崎さんからコメントをいただきました。また,当日は参加できなかった釧路市マーケティング戦略室・室長の天内さんのコメントも玉井先生から代わりに伝えました。
とてもキャッチコピーがたくさん出てきていい話し合いだと感じた。何が良いというのは人それぞれあると思うので,色んな人の話を聞きながら,進めていってほしい。

5.終結:「じゃんけん」や「くじ引き」で決める方法は,よい決め方か?
終結では,本時の学習のまとめをした後,アンケート③に答えました。アンケート③の結果は,事前アンケートの結果と比べて,賛成派が7割ほどと少しだけ増えました。
その後,ブレイクアウトルームでの話し合いはよい決め方だったのか,「効率と公正」の視点でふり返りました。
・(ルーム1の春採中1組)みんな一人ひとり意見を出そうとしていたから,話し合いは「公正」だったのではないか!
・(ルーム1の甲田中)キャッチコピーを決めるのに時間がかかったから,話し合いは「効率」的ではなかったのではないか!
・(ルーム2の春採中2組)限られた時間内に学級間で意見を合わせたから,「効率」的な話し合いだったのではないか!
このように,本時で学習した成果を用いて,じゃんけんやくじ引きなどの物事を決める方法の公平性について,「対立と合意」「効率と公正」といった「現代社会を捉える見方・考え方」を働かせながら探究することができました。
授業の最後には,各学級の担任の先生が「効率」と「公正」,どちらを重視して学級づくりや授業づくりをしているのか,玉井先生からキラーパスで質問が飛び,各学級の担任の先生からコメントをもらって授業を閉じました。
・(春採中1組)時間をかけずに決めたいので,「効率」を重視したい!
・(春採中2組)「効率」を重視してしまうが,できるだけ多様な生徒の意見を反映させたいため,「結果の公正さ」も大切にしたい思いはあります!
・(甲田中)席替えは「効率」を重視して教師側で決めるが,同じ席・同じ人同士にならないように「機会の公正さ」を大切にしています!


授業実施者Ch1:玉井慎也(北海道教育大学釧路校)
授業実施者(各学級):各学校の授業担当教員
ゲスト:長崎様(釧路市マーケティング戦略室)
学校技術支援担当①(北海道内中学校):近藤璃空,山口彩花(北海道教育大学釧路校)
事務局機器担当①(釧路市立春採中学校):大戸玲穂,中南秀矢(北海道教育大学釧路校)
事務局機器担当②(北海道教育大学釧路校):佐々島忠佳(北海道教育大学釧路校)
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