概要
2024年8月5日,東広島市内の小学校に在籍する児童4名が参加する「広域交流型オンライン学習夏休み版・発展企画「大学の先生や学生と一緒に社会科自由研究をしてみませんか?」」を実施しました。これは,東広島市の地域テーマを題材に,3回にわたって子どもたちの夏休みの自由研究を,大学教員と大学院生がサポートする企画です。
第2回目となる今回は,選択したテーマ(のんバス・外国人市民)別にフィールドワークに出て,「問い」に答えるためのデータ集めをしました。
のんバスチーム:のんバスに乗ってお客さんを数えてみた
のんバスチームは,まずのんバスに乗ってみることから調査を始めました。赤ルートの西条駅10時発のバスに乗り,ほぼ1周して「中央公園前」で下車しました。乗車時間はおよそ40分でした。乗車したお客さんは全部で16名で,とくにお年寄りや大学生が乗っていること,手押し車で体を支えているお年寄りも乗っていたこと,ショッピングセンターや病院で乗り降りする人が多かったこと,団地の中ではかなり狭い道を通っていることなどに気づきました。
のんバスチーム:市役所の担当者にインタビューしてみた
のんバスに乗った後は,市役所の地域政策課の担当者さんにインタビューをしました。
前回作った問いに答えてもらったり,のんバスに乗って気づいたことを尋ねたりしました。
Q:のんバスの料金はどうやって決めているんですか?
→国の決まりや,各地域での話し合いに基づいて決めています。
Q:始発を6時や7時などもう少し早い時間にできないのですか?
→たしかに通勤や通学にバスを使いたい人が利用してくれそうだけど,その分,多くの運転手さんが必要になるので難しいです。今,バスの運転手が足りていないんです。
Q:無人バスを走らせてはどうですか?
→昨年,ブールバールに自動運転バスを走らせる実験をしました。もっと安全性を確認したり,法律を変えたりすることが必要です。すぐには難しいかもしれません。
Q:バス停は,どうやって決められているのですか?
→お客さんが乗ってくれそうなところ,とくにお店や病院などの公共施設があるところや,人がたくさん住んでいるところを中心に選びました。
Q:乗った距離によって運賃を変えるべきではないですか?
→近い距離が安くなると,その区間に乗る人は多くなるかもしれません。しかし,反対にフジグランなど遠くまで乗る人は少なるかもしれませんね。
Q:広島大学までバス路線を伸ばしてはどうですか?
→他のバス会社がすでに広島大学まで走らせています。のんバスは路線バスが通らない場所で,移動に困る人が乗るために走らせています。それぞれ役割分担しています。
Q:寺家や龍王小にものんバスを走らせてほしいです。
→のんバスを始めるとき,寺家地区を走るかどうか話し合いました。調べたところ,車が多く,渋滞しやすく,バスが時間通りに走れないおそれがあったので,やめました。ただ寺家ではどんどん住宅が増えているので,今後は必要かもしれませんね。
のんバスチーム:いろんな人にアンケート調査してみた
西条駅までバスを待っている人や市役所北館で働いている人たちに,アンケート調査を実施しました。写真に示すように,パネルに自分たちの意見を書いて,それに賛同できるか,シールを貼って答えてもらいました。
「つぎの提案にどう思いますか?」(それぞれについて賛成か・反対か教えてください。)
提案1:始発を6時か7時にすべきだ
提案2:無人バスを走らせるべきだ
提案3:乗った距離によって料金を変えるべきだ
「のんバスのルートについて,どう思いますか?」
案1:広島大学まで行くべき
案2:龍王小や寺家まで行くべき
案3:いまのままでよい
アンケート調査には,全部で33名の方に回答いただきました。
児童Aが提案した始発時間の繰り上げには,ほとんどの人が賛成しました。最も多い理由は,通勤・通学に使えて便利だからでした。無人バスについても,賛成が多数でした。理由には,運転手が足りない問題を解決するのに役立ちそうだからが挙がりました。一方で,お年寄りからは,「運転手さんにいろいろ質問するので,無人バスになると困るな」とか,「なんとなく不安」という意見も寄せられました。距離制料金については,ほとんどの人が反対しました。理由は,200円はキリがよくて分かりやすい,距離で料金が変わると小銭を準備しないといけないので面倒だ,などがありました。
外国人市民チーム:サンスクエア東広島でフィールドワークしてみた
外国人市民チームでは,国際交流施設のサンクスエア東広島に出向き,外国人市民の生活を支援したり,お困りごとの相談に乗っている方へのインタビューを行いました。また,外国人市民の相談窓口になっている「コミュニケーションコーナー」を見学し,展示物の写真を撮ったり,そこを訪れた外国人市民の子どものお悩みを一緒に解決したりしました。
外国人市民チーム:エノックさんへインタビューしてみた
前回立てた問いに答えるために,エノックさんにインタビューを行いました。エノックさんはケニア出身の留学生で、現在は広島大学の大学院生で人工授精について勉強しています。日本に来て3年目。来日当初は全く日本語を話せず,お困りごとも多くあったそうです。しかし現在では,東広島市内の地域づくり活動に積極的に参画したり,外国から来た人を逆にサポートしたりする機会が多いことが語られました。
「日本語が全く分からない人が東広島市に来たらどうするのか?」に関心を寄せる児童Cは,「日本に来て最初に困ったことはなにか?」,「どうやって解決できたのか?」などの質問をしました 。
「1990年代に東広島市の外国人市民が急増しているのはなぜだろう?」に関心を持つ児童Dは,「なぜ日本のなかでも東広島市を選んだのか?」「東広島市での生活は快適か?お困りごとや改善してほしいことはないか?」などを尋ねました。
2人の熱心な質問に,エノックさんは当時の状況や心情を思い出しながら,丁寧かつ詳細に回答してくださいました。
外国人市民チーム:支援員の吉野さんにインタビューしていた
次に,コミュニケーションコーナーで外国人市民の相談にのっている東広島市教育文化振興事業団の吉野さんにお話を伺いました。
吉野さんからは,東広島市における外国人市民支援の現状と課題について,市が作成している資料や統計データなどを使いながらご説明いただきました。いろいろな言語に翻訳された資料を見たり,どこの国・地域から,何のために日本(東広島市)に来ているのかを聞いたりして,理解を深めました。
さらに,吉野さんへのインタビュー中,偶然,外国人市民(小学生)がお悩み(「夏休みの登校日になにを持っていけばよいの?」)の相談にやってきました。そこで,学校から配布された紙を一緒に見ながら,何を持っていけばよいか,どのように記入したらよいかを一緒に考え,お伝えしました。外国人市民のお悩みの実態を知る良い機会となりました。
他にも,サンスクエアに展示されている資料に目を向けました。いずれも貴重なデータとして写真に撮りました。
外国人市民チーム:聞いたこと,調べたことをまとめてみた
最後に,お二人へのインタビューを振り返るとともに,頂戴した外国人市民に関する資料を整理しました。自分自身の問いに照らし合わせながら,使えそうな資料を選んだり,インタビューで得られた情報のまとめ方を考えたりしました。
最終回に向けて
今回は,チームに分かれてインタビュー調査やアンケ―ト調査を行いました。多くの市民の皆様にご協力いただき,充実した2時間となりました。
いよいよ次回が最終回です。4人の参加児童は,得られたデータをどのようにまとめていくのか・・・。続報をお待ちください!
のんバスチーム:草原和博,宇ノ木啓太,神田颯
外国人市民チーム:川口広美,金鍾成,三井成宗,川本吉太郎,𠮷田純太郎
「デジタル・シティズンシップ・シティ:公共的対話のための学校」プロジェクトメンバーである三井・川本・宇ノ木・神田が更新しています! ぜひ、本記事を読んだ感想や疑問・コメントをお寄せください!
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