概要
2024年11月13日(水),韓国全北特別自治道淳昌郡福興面の福興初等学校の5・6年生(10名),福興中学校の1年生(6名),東山初等学校の5・6年生(14名)が参加し,地域出身の偉人「ガイン・キムビョンロ(金炳魯)先生」をテーマとする遠隔授業を実施しました。今回は,「淳昌郡福興面に住むわたしたちは,なぜキムビョンロ先生を学ぶのか?」と題して,地域の偉人を学ぶ理由を表現できることを目指しました。授業全体の進行を金鍾成准教授が,各学級の進行を現地の先生方が努めました。
アイスブレイクおよび導入
授業は,「淳昌郡福興面といえば?」という問いを投げかけ,お互いに淳昌郡福興面のイメージを共有するところから始まりました。地元の名産品「コチュジャン」や本時のテーマ「キムビョンロ先生」などが出されました。その後,キムビョンロ先生について知っていることを出させ,授業テーマの「なぜ淳昌郡福興面に住む私たちはガイン・キムビョンロ先生を学ぶのか?」に焦点化していきました。これまで地域の偉人であるキムビョンロ先生について学ぶことを当然視していた子どもたちにとって,今回の問いは新鮮なものであったようです。
展開1「時代背景について学ぼう」
次に,キムビョンロ先生について考える前に,先生が生きた時代背景を学びました。「日韓併合」「3・1独立運動」「光福(独立)」「南韓のみの政府樹立」という4つのカードを時代順に並び替える活動を通して,キムビョンロ先生が活躍した時期を区分し,さらにその活躍の様子を「独立運動家としてのキムビョンロ先生」「民族運動家としてのキムビョンロ先生」「法律家・政治家としてのキムビョンロ先生」に分けて考えるようにしました。
展開2「キムビョンロ先生の3つの側面について考えよう」
展開2では,エピソードを中心に「独立運動家」「民族運動家」「法律家・政治家」の3つの側面からキムビョンロ先生を深く知り,その内容に関して感想を出し合い,キムビョンロ先生から何が学べるかを議論しました。具体的には,①無料で独立運動家の弁論を担当しながら独立運動を支えるなど,日本の植民地支配に抗った「独立運動家」の姿,②社会主義と民主主義という考えの違いを乗り越え,一つの民族として独立するために努力した「民族運動家」の姿,そして③大韓民国の法律の土台をつくり,当時の政府が市民に害を与える法律を作った時,権威者を堂々と批判した「法律家・政治家」の姿,これらの姿を知った上で,キムビョンロ先生から学べることを意見交換しました。一部クラスの議論は,AI学習支援システムで集音と要約されました。本システムのおかげで,他クラスの議論や自クラスの意見との異同を把握できました。
展開3「Take-a-Stand:一番共感したキムビョンロ先生のどのような姿は?」
これまでのエピソードの学びを通して,「独立運動家」「民族運動家」「法律家・政治家」のどの姿のキムビョンロ先生に一番共感したかをTake-a-Standを用いて議論しました。各クラスの担任の先生は,児童生徒に対して3つの立場に分かれて教室の後ろに集合するように指示し,なぜその姿を支持するかを説明できるように指示されました。話し合いのようすは,前述同様にAI学習支援システムで要約され,各クラスの主張づくりに役立てられました。どの教室でも活発に議論が展開され,発言量が多かったことも印象的でした。
まとめ
最後に一連の議論を踏まえ,本時のテーマ「なぜ淳昌郡福興面に住む私たちはガイン・キムビョンロ先生について学ぶのか?」に答えました。答えのなかには,①キムビョンロ先生の人間としての選択やそれを可能にした勇気や信念,②「私だったら」とキムビョンロ先生と自分をつなげて考える答えもありました。これらを踏まえて,金准教授は,「与えられるから学ぶのではなく,自分ならではの理由を持って社会を考えてほしい。異なる考えを持つ人々といっしょに考えることで,考えをより良いものにできる,とコメントしました。
NICEの海外展開の可能性
本授業は,初めてNICEの取組を海外に展開したものでした。オンラインで学校を結んで対話している点は,東広島市の取組と変わらず,本取組の「デジタル・シティズンシップ・シティ」が日本にとどまるものではないことが確認できました。現地の先生からは,「小規模校では普段なかなか意見が深まらないことが悩みだったが,今回は意見を深めることができた」「中学生と学ぶことで,より多くの視点から考えることができた」などのフィードバックを得ることができました。子どもからは,「時間があっという間に感じた」「とっても楽しかった」などの感想も聞くことができました。
授業実施者:金鍾成
授業補助者:各小・中学校での授業担当教員
学校技術支援担当:草原和博,宇ノ木啓太,神田颯,近藤郁実
現地の先生へのインタビュー
「デジタル・シティズンシップ・シティ:公共的対話のための学校」プロジェクトメンバーである三井・川本・宇ノ木・神田が更新しています! ぜひ、本記事を読んだ感想や疑問・コメントをお寄せください!
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授業実践
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