概要
2025年9月17日(水),韓国の朱尚(ジュサン)小学校の5・6年生(12名),高堤(コジェ)小学校の4年生(1名),日本の志木市立宗岡第二小学校の6年生(70名)が「オンラインで国境をこえて友だちと出会うとしたら」をテーマとする遠隔授業を実施しました。授業全体の進行を筑波大学の玄在均(ヒョン・ジェギュン)先生,日韓の通訳を広島大学の金鍾成准教授,各学級の進行をそれぞれの先生方が務めました。


導入:それぞれの国のイメージを共有しよう
授業は「韓国(日本)と聞いたら,何を思い浮かべますか?」という問いから始まりました。子どもたちは学級で自由に意見を出し合い,その内容をGoogleスプレッドシートにまとめて共有しました。韓国の子どもたちからは,寿司やそばといった食べ物,ジブリ映画やアニメなどの文化,ユニバーサルスタジオジャパンといった場所,さらには壬辰倭乱といった歴史的な出来事が挙げられました。一方,日本の子どもたちからは,キムチやヤンニョムチキンなどの食べ物,K-POPや可愛い文房具,美容などの文化,そして日本に近いという地理的な特色が紹介されました。
この活動を通して,お互いの国に対する多様なイメージが明らかになり,「自分たちが知っていることだけではなく,もっと相手のことを知りたい」という気持ちが子どもたちの中に芽生えました。導入でこの活動を行った意味は,国際交流の第一歩として相手国への関心や学びの動機づけをつくり出すことにあります。こうして学習課題「オンラインで国境をこえて友だちと出会い,互いの国やそれぞれの学校生活について話し合おう!」へとつながっていきました。
展開1:それだけじゃない,もっと知ってほしい私たちの国
次に,それぞれ共有したイメージをもとに,相手にもっと知ってほしい自分たちの国の特色について考えました。韓国の子どもたちからは,「白いキムチや水がいっぱい入ったキムチのように辛くないキムチもあるよ」,「タンフル(フルーツ飴)など甘い食べ物も韓国にはあるよ!」,「韓服といった伝統衣装があるよ」,「私たちの住む地域ではリンゴが名産だ!」など自分たちの国や地域をアピールしました。一方,日本の子どもたちからは,「おにぎりやしゃぶしゃぶなどの和食も美味しいよ!」,「季節に合わせてお祭りをするよ」,「最近はスポーツが強い」など,自分たちも負けまいと主張をしました。
またお互いに紹介をした後にはそれぞれ質問を行い,回答する活動をしました。質問と回答は,以下の通りです。
「季節にあったお祭りって具体的にどんなお祭りがあるのですか?」
→「夏には神輿や屋台がならぶお祭りがあります。花火大会もあります。」
「スポーツが強いということでしたが,具体的にどんなスポーツが強いのですか?」
→「大谷選手の活躍する野球,八村選手の活躍するバスケットボールがあります。ほかにも柔道,空手,サッカーなどもあります。」
「キムチってどんな料理で使いますか?」
→「豚肉キムチチゲ,キムチポックンパ(チャーハン),キムチ餃子などがあります。」
「韓国ではどんな文化がありますか?」
→「日本は柔道が有名とありましたが,韓国はテコンドーが有名です。」
「韓国で甘いものってなんですか?」
→「シッケ(甘酒のようなもの),ヤッカ(小麦粉を上げ,はちみつにつけたもの)などがあります。」


展開2:学校生活を比較しながら,日本と韓国の違いについて考えよう
授業後半では,普段子どもたちが過ごしている学校生活を事例に,よりそれぞれの国の違いについて考えを深めていきました。ここでは,事前に「①授業②遊び③給食④掃除」について,写真をそれぞれ1枚準備して,その写真をもとに説明をしました。
① 国語,算数,理科,社会などたくさんの教科を学ぶ。1コマ45分で1日に5~6時間ある。友だちと協力したり,自分で考えたり行動することを大事にしている。みんなで静かに先生の話を聞く時間と自由に意見を言う時間がある。最近はタブレットも使う。楽しく学ぶことと思いやりの心を育てる授業が行われている。
② 1日に長い休みが2回あり,どちらも20分間。外で遊んだり,体育館で体を動かしたりする。図書室で読書や教室で勉強・おしゃべりをしている人もいる。鬼ごっこやサッカーをする。
③ 給食は学校で作られていて,栄養バランスが考えられている。3~4品の給食が出る。配膳や片付けは自分たちで行う。食べることの大切さやマナーを学ぶ。
④ 給食のあとに,掃除をする。各クラス掃除当番が決まっている。教室,廊下,トイレなどを掃除する。みんなで協力することで,働くことの大切さや環境を守る心を育てている。
① 児童は1人なので,いつも先生と2人で勉強する。教室は普通の半分くらいの大きさ。ボードゲームがいっぱいある。特徴的な授業として,日本語教育や伝統楽器を学ぶ授業がある。1人しかいないので,すべての発表を1人でやらなければならない。
② 休憩は午前中に20分,午後に30分ある。遊びの時間にはボードゲームをしたり遊び場で遊んだりする。全校児童が9名しかいないので,みんなで一緒にボードゲームをするときもある。
③ 給食は給食室で食べる。ご飯,汁物,キムチが基本で3品ぐらいのものが毎日変わりながら出る。月曜日はバナナ味のミルクが出ておいしい。水曜日は特別メニューが出る。今日は水曜日なのでとても楽しみ。
④ 役割は毎週変わる。掃除機で床を掃除したり,ホワイトボードをきれいにしたりする。ゴミ箱を空にする役割もある。
① 今回は家庭科の授業を紹介する。プログラミングの授業で,サッカーボールのようなものをつけたドローンを使ってゴールを奪い合う授業がある。コーディングというプログラムをする授業もある。音楽の授業ではリコーダーを吹くこともある。
② 午前中と午後に休憩ある。ピグ(ドッチボール)をする。みんなピグが大好き。
③ 給食の配膳は専門の調理員さんがしてくれる。たまに担任の先生が配ってくれる。給食室で幼稚園も含めてみんな集まって食べる。主に同じ学年が集まって食べる。ご飯,汁物,ナムル,飲み物,ほかにも様々なおかずが出る。
④ 掃除の時間があるわけではない。自分の席の近くが汚くなったら自分で掃除をする。ゴミ箱を空にする1週間単位の当番がある。お手洗いは専門に掃除をしてくれる方がいる。
展開3:それぞれ質問をしよう
それぞれの学校生活の発表を踏まえ,質問を作りました。日本と韓国の学校生活はどういったところで似ていて,どういったところで異なるのかということを考えながら質問を作りました。質問は以下のようなものを考えました。
「韓国は40分授業なのですが,日本は45分授業ということで,家に帰る時間は遅くなりますか?」
「給食を教室で食べるということでしたが,誰が教室まで運ぶのですか?」
「掃除当番はどんな役割がありますか?どのくらいの頻度で交代するのですか?」
「韓国の給食には毎日キムチが出るのですが,日本で毎日出るおかずはありますか?」
「国語はどんなことを学んでいますか?」
「給食では人気のメニューはありますか?デザートは出ますか?」
「水曜日の特別メニューはどんなメニューですか?」
「掃除機以外にどんな道具で掃除をするのですか?」


まとめ:国境をこえてオンラインでつながる
授業は盛り上がり,今回は質問を作るところまでで時間が来てしまいました。最後に今回の授業の感想をそれぞれ発表し合い,お別れとなりました。玄先生からは,今回のようにいろんな視点からお互いの国や生活をみていくことで,もっともっと知っていく関係になってほしいと授業を締めくくりました。
「実際につながることで日本と韓国の似ているところ,違うところが分かってすごく楽しかった。」
「日本について,たくさんの新しいことを知ることができた。たくさん話し合いができてとても楽しかった。」
「実際に会って皆さんともっともっと話してみたいと思った。」
デジタル・シティズンシップ・シティの新たな可能性
この取組は,昨年度の韓国での実践に続いて「デジタル・シティズンシップ・シティ」を海外に展開する試みです。日本以上の速度で人口減少が進行する韓国でも有効であることを実証するだけでなく,韓国出身の筑波大学の玄先生を遠隔授業ファシリテータ教員(T1)の経験者に加えることができました。参加した学校の先生方からも,「とても意義深い授業であった」,「子どもたちがとても満足していて,楽しく学ぶことができた」などコメントをいただきました。「デジタル・シティズンシップ・シティ」のヴィジョンの広がりと共感を確認できた実践となりました。




昨年度の韓国の実践はこちら
授業実施者:玄在均,金鍾成
授業補助者:各小学校での授業担当教員
学校技術支援担当:川本吉太郎,宇ノ木啓太,近藤郁実
事務局機器担当:神田颯
「デジタル・シティズンシップ・シティ:公共的対話のための学校」プロジェクトメンバーである三井・川本・宇ノ木・神田が更新しています! ぜひ、本記事を読んだ感想や疑問・コメントをお寄せください!
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