指導案・教材
概要
2024年12月19日、北海道の先生方による2回目の広域交流型オンライン授業が実施されました。今回の授業は、釧路町立別保小学校の中村亮太教諭(小学校5年生35名)が企画し、釧路町と同じ湿原がある町、浜中町立霧多布中学校3年生(17名)が参加しました。子どもたちは、本時までにそれぞれの地域にある湿原について、総合的な学習の時間等に学んでいます。本時では、釧路町トリトウシ原野に建設された太陽光パネルをめぐる「地域行政」「企業」の思いや願い、工夫や努力を聞き取りながら、設置の賛否を考えることを意図していました。授業は中村教諭が進行されました。
それぞれの学校を紹介し、学習課題を共有しよう
本時は、それぞれ町や学校について紹介することから始まり、両校の子どもたちから、それぞれの地域に湿原があり、湿原について学んできていることが発表されました。それを受け、中村教諭から本時は湿原をテーマに学習し、中でも釧路町に設置された「やちぴかソーラー」に注目することが確認されました。さらに、釧路湿原の南東部にあるトリトウシ原野には7万枚の太陽光パネルが設置されていることが示され、釧路湿原の近くに太陽光パネルを設置することに関する賛否を問うアンケートが行われました。アンケート結果はそれぞれの学校から即時に共有され、授業開始時には、両校とも反対よりの考えを持つ子供が多いことが確認されました。(別保小:賛成より4名、どちらとも4名、反対より19名。霧多布中:賛成より2名、どちらとも5名、反対より10名) そして、本時のゲストとして、太陽光パネル設置業者である(株)大林クリーンエナジーの菊谷社長、釧路町環境生活課の大中課長、浜中町住民環境課の小林係長が紹介され、本時の学習課題「釧路町トリトウシ原野に太陽光パネルを置いた人に物申す!!-太陽光パネルは地域を『壊す』もの?『救う』もの?-」が共有されました。
太陽光パネルを置いた人に物申そう!
学習課題が共有された後、両校の子供たちから釧路湿原について調べたことをもとにして、太陽光パネルを置いた人に対し意見や要望が出されました。「釧路湿原の自然環境を守るために、これ以上太陽光パネルを増やさないでほしい。」「釧路湿原に影響が出ない場所に設置すべきだ。」など反対派からの要望が発表された一方で、「再生可能エネルギーを活用し、ゼロカーボンの実現につなげるべきだ。」「使用していない土地を有効活用すべきだ。」などの賛成派からの要望も発表されました。その後、3名のゲストから子供たちの発表を聞いた感想が述べられました。菊谷社長からは、反対派の子供たちに対して、生物への影響がないことを調査を通して把握していること。大中課長からは、両校の子供たちが湿原に対する愛情を持っていることやしっかりと調べ考えていること。小林係長からは、太陽光パネルと環境保全の両面を考えていく必要性などが述べられました。 それを受け、中村教諭からは、「環境保全と人間の生活の両方のバランスを大切にしていくこと」「自治体としてどのように決まりを作っていくかを検討していくことが重要なこと」などを子どもたちに投げかけ、一時間目を終了しました。
太陽光パネルを設置した人から話をきくよ。納得できるかな?
2時間目は、太陽光パネルを設置した業者や役場の方から、太陽光パネルの重要性についての話を伺うことから始まりました。まず、菊谷社長から、発電方法や電力供給の現状を踏まえながら、再生可能エネルギーの重要性が高まっていること、事前調査を行い、設置場所や設置方法など環境保全に配慮しながら太陽光パネルを設置していることなどが説明されました。続いて、大中課長から、釧路町では、ゼロカーボンを目指し、省エネ、再エネ(再生可能エネルギー)の使用を奨励していることが説明されました。さらに、小林係長からは、浜中町が太陽光パネル設置の条例を策定して太陽光パネル設置に制限をかけていること、一方で国の法律以上の制限をかけることの難しさ、住民の納得を得ることの重要性などが説明されました。
その後、湿原と太陽光パネルについて、市民の「納得」を得ないまま設置が進むと「地域を壊すもの」になる。「環境保全」と「人間生活」を両立しながら設置するためのルールを工夫することで「地域を救うもの」になることがまとめられた後、最後に、子どもたちは授業冒頭で行ったアンケートに再度回答しました。その結果、賛成よりや、どちらともいえないといった意見が増え、本時を通して児童の考えが揺さぶられたことが見て取れました。(別保小:賛成より10名、どちらとも8名、反対より11名。霧多布中:賛成より6名、どちらとも6名、反対より5名)
草原教授は、ゲストの話を聞いて意見が賛成よりに変わったり、意見を変えず環境保全を優先してほしいと願っていたりする子供たちの考えを取り上げながら、今後も町のルール作り、設置業者の話、自分たちの気持ちなど、様々な視点から太陽光パネルの設置問題を考えていくことの重要性を示し、授業を終えました。
菊谷社長
浜中町住民環境課の小林係長
授業実施者:中村亮太教諭(釧路町立別保小学校)
授業参加者:佐藤健翔教諭(浜中町立霧多布中学校)
指導案作成支援:玉井慎也(北海道教育大学釧路校)
学校技術支援担当(別保小学校):佐藤朝陽,佐々島忠佳(北海道教育大学釧路校・学生)、草原和博、三井成宗(広島大学)
学校技術支援担当(霧多布中学校):宇ノ木啓太(広島大学)
中継担当(浜中町役場):川本吉太郎(広島大学)
遠隔サポート:草原聡美 (広島大学)
「デジタル・シティズンシップ・シティ:公共的対話のための学校」プロジェクトメンバーである三井・川本・宇ノ木・神田が更新しています! ぜひ、本記事を読んだ感想や疑問・コメントをお寄せください!
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