授業実践

【伝とう】「伝とう 」ってかわっていいの?わたしたちのまちの伝とうの未来を予想しよう

2021.11.17
目次

2021年11月17日に,東広島市内小学校3校4学級(原,高屋東,造賀)の4年生(51名)が参加し,「伝とう」をテーマとする授業を実施しました。2時間を通した学習課題は「「伝とう」って変わっていいの? 私たちのまちの伝とうの未来を予想しよう」に設定されました。

1時間目の導入は,給食の4枚の写真を見て古い順に並べかえるクイズから始まりました。児童はタブレットを使って回答しました。教室では,給食の変化をつぶさに眺めて,①主食・おかず・飲み物という組み合わせ,子どもには元気に育ってほしいという願いは「変わらない」ことを見いだすとともに,②品数の増加,栄養の高まり,洋風化,地産地消などの「変わっている」ところを見つけていきました。

1時間目前半では,歌舞伎や能など「伝統」芸能の具体を確認するとともに,その「伝統」とは「変わる」こと「変わらない」こと,どちらを意味するかについてイメージをタブレットで投票をしました。投票の結果,「変わらない」が多数派でしたが,「変わる」と主張する子どもも一定数いたため,その違いと理由を確認していきました。

1時間目後半では,広島県の芸能の一つ「神楽」が定期的に公演されている神楽門前湯治村からの中継を結びました。また安芸高田市役所の神楽専門家のお話を視聴し,①豊作を祈る思いは昔から「変わらない」こと,②しかし,その運営は信仰や祭礼の場から徐々に観光化・商業化が進み「変わっている」こと,③「変わっていく」ことで伝統を受け継ぐことができること,④「神楽」を残していくために,大都市や海外で講演したり,高校生の大会(神楽甲子園)を主催したりしていることなどを確認しました。最後に,伝統とは「変わらない」ことだから「神楽」は伝統とはいえないのか,それとも「変わり」ながら続いているからこそ「神楽」は伝統といえるのか,児童の「伝統」認識に揺さぶりをかけました。

2時間目の導入では,各学校で受け継がれている文化を相互に紹介し合いました。各学校から,とんどや地域のお祭り,伝説をもとにした劇,などが紹介されました。

2時間目の前半では,明治時代から「歌舞伎」が演じられている白市地区の高屋東小学校から中継を結びました。また白市で歌舞伎を引き継いでいる方のお話を視聴し,歌舞伎の演者は,①上方のプロから,素人の地域住民へ,そして子どもへと「変わっている」こと,②歌舞伎は2度「終わる」も,歌舞伎が好きで地域に残したいと願う人々の手でその都度「復活」してきたことを確認しました。

2時間目の後半では,自分たちの学校の文化が10年後どうなっているかを予想しました。各学校では,学校がある限り・記念の絵がある限り残るはずだ,自分たちもやって楽しいから残っていくはず,との予想と理由が発表されました。最後に,広島大学の川口広美先生からコメントをもらいました。川口先生は,①各学校には様々な文化があり,どの学校も上手に紹介できていたこと,②伝統を守るという気持ちを大事に思い続けてほしいこと,③伝統は守るだけが大事でなく,遊びたい・家族と過ごしたいなど色々な人の思いを大事にし,「何を残し,何を変化(変身)させていくか」を考えてほしいとお話されました。

2時間の学習を通して,「伝統」を変化と持続という視点から探究しました。「伝統」とは,昔からそのまま受け継がれたものではなく,携わる人々の手で絶えず作り替えられてきていることを学びました。

ご協力いただいた全ての関係者に御礼を申し上げます。

この授業の関係者

授業実施者:草原和博
授業補助者:各小学校での授業担当教員
高屋東小学校から中継担当:川本吉太郎、 川上由美
安芸高田市神楽門前湯治村からの中継担当:正出七瀬、津田晃希、大岡慎治
学校技術支援担当:吉田純太郎、佐藤莉沙、澤田百花、國重和海
事務局機器担当①:今井祐介、草原聡美
事務局機器担当②(高屋東小学校):宇ノ木啓太、藤井冴佳

この記事を書いた人
SIP staff
三井・川本・宇ノ木・神田

「デジタル・シティズンシップ・シティ:公共的対話のための学校」プロジェクトメンバーである三井・川本・宇ノ木・神田が更新しています! ぜひ、本記事を読んだ感想や疑問・コメントをお寄せください!