授業実践

【ごみの始末と利用】広島中央エコパークは,なぜ「広島中央」なのか?本当に「エコ」な「パーク」なのか?

2022.05.25
目次

2022年5月25日,東広島市内小学校9校19学級(西条,寺西,郷田,高屋東,東西条,高美が丘,板城西,福富,豊栄)の4年生(605名)が参加し,「ごみの始末と利用」をテーマとするオンライン授業を実施しました。

1時間目は,「みんなの家から出るゴミが集まる広島中央エコパークは,なぜ「広島中央」で,「エコ」で「パーク」なのだろう?」をめあてにして学習を進めました。本来,汚くて臭いゴミが集まってくるためにマイナスイメージの強いゴミ処理工場が,どうして「エコ」「パーク」なる名前を冠しているのか。まして東広島市に所在しているのに,なぜ「広島中央」を名乗っているのか。児童がゴミ処理工場に対して抱いているイメージと,施設名とのギャップに迫ることで,広島中央エコパークの果たす役割やその機能について理解を深めることを図っています。

まず導入部では,私たちが出すゴミの行方を考えました。事前アンケートの結果によれば,参加児童の約半数が,朝出した燃やせるゴミがその後どこに行くのかを知らないことが明らかとなりました。そこで,ごみ収集車やバキュームカーが施設の中に入っていく様子を中継することによって,ゴミの終着地が広島中央エコパークであるという共通認識を持たせました。

次に,展開部では,上記のめあてを基に,①広島中央,②エコ,③パークのそれぞれに注目して,施設の特徴について認識させました。具体的には,①広島中央エコパークには,東広島市だけではなく竹原市や大崎上島町からもゴミが送られてくるということ(=施設の広域性)。②広島中央エコパークでは,ゴミを高温で処理して溶融物を資源に変えたり,燃焼時に発電を同時に行ったりしているということ(=施設の循環性)。広島中央エコパークでは,子ども向けの学習コーナーでゴミやし尿の処理について勉強したり,足湯や遊具を楽しんだりすることができるということ(=施設の娯楽性)を学びました。

①から③のいずれも,1人1台端末を活用したクイズ場面と,学生リポーターによる中継場面の2段構えで構成されていることがポイントでした。各パートでは初めに「広島中央エコパークにはどこからゴミが集まってくるのかな?広島市?三原市?大崎上島町?」といったクイズに回答することを通じて,子どもは楽しみながら自己の仮説を生成することができました。また,それを臨場感あふれる中継映像によって答え合わせをすることで,児童は現地で見学をしているような感覚でエコパークについて学ぶことができました。巨大なクレーンがゴミを攪拌する様子や,大崎上島から収集車がフェリーを使ってゴミを運搬している様子を中継したシーンでは「おおーっ!」「すごい!」と声を上げる児童も数多く散見されました。

2時間目は,「ゴミについて,どんな課題を調べたり,追究したりしたらよいだろうか?」をめあてにして学習を進めました。1時間目で学んだことから生じる新たな疑問から,今後のゴミ学習の追究課題を発見・設定させることを図っています。

具体的には,「私たちは,ごみの●●について追究したいです」の●●に入る言葉を各学級で決定しました。例えば「なぜゴミは分別しないといけないのか」,「燃やせないゴミはどうやって処理しているのか」,「ゴミ処理場があるのに,海にゴミがあるのはなぜか」といったアイデアが学校から出てきました。特に「なぜエコパークは市内の便利なところではなく山の中にあるのか」は,ゴミ処理場が市民生活を営む上で必要なのはわかっているが自分の家の近所に作ってほしくはない……というジレンマを子どもに認知させる点で注目すべき問いでした。

また,授業者からも探究したい課題の例が示されました。「こんなにすごいエコパークだったらもっと広がればいいのに…。なぜ県内には1つしかないのですか?」,「東広島市のごみ袋のねだんが(他の町と比べて)高いのは,エコパークのせいですか?」,「こんなにすごいエコパークだったらもっと早く作ればよかったのに…。なぜ準備から完成まで10年もかかったのですか?」といった質問とその回答を通じて,児童はゴミ処理場の必要性のみならず,課題(=莫大な運営・維持コスト,地域住民からの反対)について認識しました。

最後に,「広島中央エコパークは●●のために作られたしせつです」について,●●に当てはまる語を考えることによって,施設の理念や役割に注目しながら2時間の学びをまとめました。本時の内容理解が十分であったことを示す「3つの市町村が協力してごみを無くすため」,「遊びや安全,学習のため」といった回答が見られました。また,多くの学校が「未来」や「地球」という語を用いた説明をしていることから,子どもたちは持続可能なゴミ処理の必要性に気づくことができたものと推察されました。

2時間の学習を通じて,児童は市内のゴミ処理場に関して概観を認識し,ゴミに関する課題を発見することが出来ました。ゴミ学習単元の導入にふさわしい学習となりました。また,600名を超える児童が一斉にゴミ処理場を観察することが出来た点からは,遠隔学習が従来の社会科見学のオルタナティブになりうる可能性も感じられます。

この授業の関係者

授業実施者:草原和博
授業補助者:各小学校での授業担当教員
広島中央エコパークからの中継:大岡慎治,神田颯,國重和海,両角遼平
大崎上島からの中継:川本吉太郎
学校技術支援担当:小田原瞭雅,上口朋佳,近藤郁実,近沢菜々子,藤井冴佳
事務局機器担当①:小野創太,草原聡美,藤井日羽
事務局機器担当②(西条小学校):正出七瀬,田中崚斗,吉田純太郎

この記事を書いた人
SIP staff
三井・川本・宇ノ木・神田

「デジタル・シティズンシップ・シティ:公共的対話のための学校」プロジェクトメンバーである三井・川本・宇ノ木・神田が更新しています! ぜひ、本記事を読んだ感想や疑問・コメントをお寄せください!