2025年6月24日(火)に草原和博教授,宇ノ木啓太研究員が北海道教育大学釧路校を訪問し,「デジタル・シティズンシップ・シティ(DCC)」をテーマにした授業にゲストティーチャーとして参加しました。
当日は,玉井慎也講師(北海道教育大学釧路校)が担当する「初等社会科教育法AC」(第11回)の授業において,受講生91名に向けて,DCCの視点を取り入れた指導案の立案や授業運営の工夫についてコメントを行いました。受講生は,授業課題として「釧路を起点に北海道内をつなぐDCC型指導案」の作成に取り組んでおり,その中で複数校がつながる広域的な学びのデザインについて活発な議論が交わされました。
草原は,DCCを実現する授業づくりの原則として,「空間的越境」「社会的越境」「文化的越境」の三つの越境を挙げ,それらを通して公共的対話を育み,デジタル公共圏を構築していくことの重要性を伝えました。これらの越境は,すべての授業で濃淡の違いこそあれ,欠かすことのできない原則であることを強調しました。
授業内では,「複数校をつなぐことの意義が見出しづらい」という受講生の声も聞かれました。これに対して草原は,「地域や学校の違いがあるからこそ生まれる学びを見出すことが大切です」と応じ,異なる地域間の連携がもたらす教育的価値について解説しました。
授業の終盤では,草原・宇ノ木両名が個別に学生の指導案に関する悩みに応じる時間が設けられ,以下のような具体的な質問と回答が交わされました。
回答
オンラインだからこそ,複数の店舗形態を取り上げてみてはいかがでしょうか。私たちが行った授業では,教科書に掲載されているスーパーだけでなく,農産物直売所,移動販売車,コンビニなども扱い,「買い物に困っている人にとって最適なお店はどこか」を考える授業を実施しました。社会科見学では実現が難しい,広域交流型オンライン学習ならではの学びを意識してみてください。
回答
まずは,2時間の中で達成したい目標を明確にすることが大切です。「遺跡」の重要性を概念的に理解させたいのであれば,各校から地域の遺跡を紹介し合い,共通点を見出して「遺跡とは何か」を考えるような構成が考えられます。後半には,地域の遺跡管理に携わる行政の方などを招き,「どんな遺跡を残すべきか」を考える機会を設けるのも良いと思います。
この講義では,今後オンラインを活用した模擬授業の実施も予定されています。学校現場にとどまらず,教員養成課程においてもDCC型授業を体験的に学ぶことで,DCCの理念と実践をより広く展開していくことが期待されます。引き続き,全国各地へのDCCの拡張に取り組んでまいります。

