2025年3月12日に第3回SIPデジタル・シティズンシップ・シティ連絡協議会を開催しました。本協議会は,SIP事業に採択された「デジタル・シティズンシップ・シティ:公共的対話のための学校」を円滑に推進するために,関係機関(広島大学,東広島市,ソフトバンク株式会社)が協議を行う場です。研究開発責任者の草原教授が議長を務めました。
カリキュラム開発の成果
前半は,今年度の事業成果が報告されました。まず,カリキュラム開発の成果が報告されました。4年目の本年度は,社会科(小・中)に加え,多文化共生や夏休み特別企画,広島空港学びの拠点プロジェクト,海外展開コンテンツといった幅広いカリキュラムが開発されました。延べ20回・106校・児童生徒4086人が参加し,いずれの学習においても高い授業満足度と社会参画意識を形成できたことが確認されました。また,児童生徒は他校の児童の意見を認知することに学習の意義を見出したこと,自らの所属するコミュニティの地域的課題を取り扱うことで共同的な問題意識を構築できたことなど,次年度以降や他自治体も参照可能な知見が提供されました。
社会基盤開発の成果
次に,社会基盤開発の成果が報告されました。ここでは,①東広島市がDCCのモデルケースとなり,②東広島市と交流する自治体が増え,③各自治体が自立的なDCCを形成していき,さらに自治体同士が交流していくという展望が示されました。実際,今年度は26の国内他自治体が東広島市と交流し(②),北海道に自立的なDCC拠点が形成されたこと(③),さらに自治体レベルの連携や海外展開が進められていることが示されました。
不登校児童生徒等への学習機会の提供の成果
続いて,フレンドスペースやスペシャルサポートルーム等に通う不登校児童生徒等に学びの場を提供する取組についても報告されました。学級が同一チャンネルでつながる学習空間(通称,チャンネル1)に加え,チャンネル1の様子を副音声放送とともに視聴する学習空間(通称,チャンネル2)を開設したことが紹介され,その成果と課題が示されました。
AI技術開発の成果
最後に,AI技術開発の成果が報告されました。AI学習支援システムについては,授業での扱いやすさや安全性に配慮された改修がなされたこと,システムを実装した授業例が示されました。また,遠隔授業の企画・検索を行うマッチングアプリの開発成果についても説明されました。今後,ブラウザ版の展開や外国語対応,ユーザビリティテストなど,社会実装に向けてさらなる開発が進められることが確認されました。
協議の成果
前半の成果報告を踏まえ,後半の協議では,本事業の魅力を発信したり,保護者の参観を促したりすることで,本事業の理解拡大を図ること,とくに不登校傾向の児童生徒の通う施設への積極的な参加の働きかけを進めることの意義について,関係者間で合意しました。
本協議会は,関係機関の連携の重要性を再認識する場となりました。東広島市教育委員会の市場一也教育長からは「児童生徒が自分の置かれた場所や状況にとらわれることなく,立場や言語,価値観,文化の垣根を越えて,公共的課題の解決に向けた対話をする力は,東広島市が掲げている教育振興計画の理念『主体的に学び続け,共に支え合い,豊かな人生を切り開く東広島教育の創造』に合致するものと考えている」「デジタル技術がさらに加速する中で様々な影響が予想され,その有効な活用方法や実践について研究していることは,本当に価値ある貴重な挑戦的な取組だと考えている」とのコメントをいただきました。
今後も,関係機関が密接に連携しながら,SIP事業の拡張に努めてまいります。



