指導案・教材・YouTube動画
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概要
2025年6月25日(水),北海道内小学校6校10学級(釧路市立清明小,北見市立中央小,伊達市立関内小,奥尻町立奥尻小,奥尻町立青苗小,新得町立富村牛小)の3・4年生117名が参加し,遠隔授業を実施しました。授業の主題は,「お店ではたらく人と仕事-お店が少ないトムラウシ地区のお困りを解決するお店とは?-」。買い物に不便を抱えるトムラウシ地区の実情や,住民・企業の声をもとに,どのようなお店が地域の課題解決にふさわしいかを考えました。草原和博教授が授業の全体進行を,担任(T2)が各教室の進行を務めました。

導入:お買い物のお困りごと
授業は,トムラウシ地区に住む郡山さんと佐藤さんの買い物のお困りを紹介する動画の視聴からスタート。子どもたちは,週に1回休みの日に1時間かけてスーパーに行っている現状や,スーパーでアイスクリームを買っても家に着く頃には溶けてしまうといった不便さを語ってくれました。子どもからは,「どうして近くにお店をつくらないのか」といった声が上がりました。
続いて,自分たちの住む地域の買い物環境について確認しました。多くの地域の子どもたちは「そこまで困っていない」という生活感覚を主張。買い物のしやすさを色で示した「食料品アクセスマップ(農林水産省)」を示したところ,「地域によってお困り度が違う」「奥尻は困っていることになっているけど全然困っていない」などの気づきも生まれました。
買い物のしやすさに地域差があることに気づいたところで,「トムラウシ地区の人はどうしたらよいか」アンケートを実施しました。結果は,「仕方がない・あきらめる」4.8%,「お店に来てもらう」59%,「それ以外に何かする」36.2%。多くの子どもたちが何かした方がいいと考えていると分かったところで,学習課題「お買い物で困っているトムラウシ地区にふさわしいお店を提案しよう!」が提示されました。


展開1:お店の特色を調べよう!
子どもたちは,「イオン」「セブンイレブン」「とくし丸」など,8つのお店の名前カードを使って,お店の種類ごとに仲間分けをしました。「セイコーマートはセブンイレブンと同じ仲間」「カケルって何?」といった意見を出しながら,「スーパーマーケット」「コンビニエンスストア」「移動販売車」という3つのタイプに分類していきました。
その後,コンビニの代表として「セイコーマート」,移動販売車の代表として「おまかせ便カケル」,スーパーマーケットの代表といて「雷さとう」に注目。3つのお店の映像や働いている人の話をもとに,以下の5つの視点で各お店の特色を調べました。
お店の特色を比べる5つの視点
ア:人気の商品・サービス,
イ:商品の数や種類,
ウ:お客の数や特徴,
エ:開店時間,
オ:売り方の工夫
調べた結果,「セイコーマート」については,「179市町村のうち175市町村に出店」「温かいチキンやお弁当,バナナが人気」「24時間年中無休(※営業時間は店舗により異なります)」「観光客や働いている人が多い」「コピーやチケット購入,ATMも利用できる」といった特徴が挙げられました。


「カケル」では,「商品は1000種類」「生鮮食品やお惣菜がある」「週に2回,家の近くまで来てくれる」「1日約30か所,1か所につき5~15分停まる」「車がない高齢者に感謝されている」「税金やスマホ料金の支払いができる」「15年前に始まった」など,高齢者に寄り添った工夫が多く見られました。


また,「雷さとう」では,「10時~18時営業」「新鮮な果物や肉・魚が手頃な価格で買える」「全国や世界から仕入れている」「近所の住民やレストラン関係者が買いに訪れる」といった点が確認されました。


お店の特徴を確認するたびに,子どもたちは3つのタイプのお店の魅力をキャッチフレーズで表す活動に取り組みました。「便利で助かるコンビニエンスストア」「お年寄りや体の弱い人に優しい移動販売車」「いろんな種類があって,身近なスーパーマーケット」など,子どもたちの言葉でお店の特色をまとめていきました。


展開2:イチオシのお店とは
3つのタイプのお店の特色を理解した後,それぞれの良さを踏まえて「どのお店がトムラウシ地区にふさわしいか」を考えました。まず,3つの中からトムラウシ地区に1番よいと思うお店をアンケート形式で選びました。結果は,スーパーマーケットをえらんだ子どもが最も多く,次いで移動販売車,コンビニの順でした。
続いて,それぞれの選択理由を尋ねると,スーパーマーケットを選んだ子どもは「いろいろなものを安く買えるから」と話しました。移動販売車を選んだ子どもからは「家の近くまで来てくれるし,品数も多い」との声がありました。コンビニを選んだ子どもたちは「24時間営業で,いつでも必要な物が買えるから」と説明しました。

終結:お困りは解決できるか
授業の終盤では,トムラウシ地区の子どもにどのお店がいいか聞いてみました。すると,いろいろな種類のものを売っているスーパーマーケットを希望しました。しかし,スーパーマーケットで働く人は「お客さんが少ないと値段を上げたり品数を少なくしたりしないといけない。トムラウシ地区に出店するのは難しい」と返答。また,コンビニや移動販売車で働く人も「人手とお金が足りない」「移動販売車の基地となるスーパーマーケットがないところには行けないかも」といった難しさを述べました。こうして子どもたちは,「必ずしも理想通りにはならないな」「お客さんが少ないとお店はつくれない」などの気づきを得ました。
最後に,草原教授は「どのお店にも魅力がある」「人口が少ないところや儲からないところにお店を出すのは難しい」「しかし,みんながお買い物の難しさを解決しようと努力している」とまとめました。


多様なステークホルダーを巻き込む授業へ
今回の授業では,買い物困難地域の課題に焦点を当てながら,お店の特色の分類と概念的理解を踏まえて,解決策を提案していきました。
本時のポイントは,「買い物に困難を抱える当事者」と「お店を出す企業」そして「北海道各地の学校」がつながったことです。「デジタル公共圏」の構築を目指す本授業において,参加校とお店の関係者が,人口の偏在に由来する困難な状況を見出し,より住みよいまちを構想していく一連の流れは,公共的対話の姿そのものでした。今後もNICEプロジェクトでは,社会の一員として地域の在り方を考えることができる姿勢を育てていきます。
授業実施者Ch1:草原和博
授業補助者:各小学校での授業担当教員
雷さとうからの中継:大戸玲穂,玉井慎也
学校技術支援担当(北海道内小学校):川本吉太郎,三井成宗,神田颯,佐々島忠佳
事務局機器担当(釧路市立清明小学校):宇ノ木啓太,瀧田勇仁,下川瑠生,草原聡美
「デジタル・シティズンシップ・シティ:公共的対話のための学校」プロジェクトメンバーである三井・川本・宇ノ木・神田が更新しています! ぜひ、本記事を読んだ感想や疑問・コメントをお寄せください!
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