授業実践

【未来とつながる情報】新聞やインターネットの情報は無料だろうか?

2025.12.10

指導案・教材・YouTube動画

概要

 2025年12月10日(水)、広域交流型オンライン授業『未来とつながる情報』を実施しました。東広島市・廿日市市・北海道釧路町・伊達市・奥尻町など全国8校15学級、計361名とスクール“S”・教育支援センター・校内教育支援センター(SSR)が参加しました。授業の主題は『新聞やインターネットの情報は無料だろうか?』で、情報産業の仕組みや無償情報の背景を考えることを目的としました。授業では、地域情報紙『プレスネット』の担当者をゲストに迎え、フリーペーパーの収益構造や広告の役割を学びました。児童は広告探しや料金予想アンケートを通じて、広告費が情報提供を支えていることを理解しました。本授業を通じて、児童は『広告があることで無料で情報を得られるが、広告がなければ誰かが費用を負担しなければならない』という現実を知り、情報産業の仕組みについての理解を深めました。

導入

 導入では、まず児童が身近な「フリーペーパー」に注目しました。「あなたのまちの新聞を自慢しよう」という活動を通じて、各地域で発行されている新聞の名前や発行頻度、掲載内容を共有し、共通点を見つけることで興味を引きました。次に、「この新聞を発行するのにどんなお金がかかっているだろう?」という問いを投げかけ、児童の疑問を引き出しました。この段階で児童は「情報はタダで手に入るもの」という認識を見直し、背景にある仕組みを探る姿勢をもつことができました。

展開1:フリーペーパーの無償理由を探る

 展開1では、東広島市の地域情報紙「プレスネット」の担当者とのオンライン交流を通じて、フリーペーパーの収益構造を学びました。「おもな収入は何ですか?」「載っているのはすべて広告ですか?」といった質問に対し、広告収入が重要な役割を果たしていることを理解しました。そして、広告に赤丸をつけることで、紙面の多くが広告で占められていることに気づきました。
 また、「のん太アンケート」では、広告料の推測を行い、実際の料金表と照らし合わせることで、広告料の高低が掲載位置やサイズによって決まることを学びました。多くの児童が「広告料金は思っていたより高い」と回答し、「なぜ企業は高額な広告料を払うのか?」という問いに対して、広告が地域の人々にとって有益な情報であることを確認しました。まとめ1として、「フリーペーパーは企業が支払う広告費によって成り立っており、広告も記事と同様に地域に役立つ情報である」という理解を深めました。

展開2:インターネット情報の無償理由を探る

 次に、情報産業の仕組みをインターネットサービスに広げました。「フリーペーパー以外で、利用者が無料で使える情報サービスには何があるか?」という問いから、児童はSNSや動画配信サービスを挙げました。
 「広告探し競争」では、児童がインターネット上で広告を見つける活動を行い、YouTubeなどの動画サービスにも広告が組み込まれていることを確認しました。また、「広告を消すことはできるのか?」という疑問を通じて、広告非表示の仕組みやサブスクリプション(課金)サービスの存在を学びました。まとめ2として、「インターネットサービスも広告収入や課金によって成り立っている」という理解を整理しました。

展開3:無償情報の是非を考える

 展開3では、児童が「YouTubeを見るための費用は誰が払うべきか?」というアンケート(TSUNAGU Proによる意見収集)に回答しました。選択肢は「会社(広告派)」「個人(課金派)」「国や市(みんな派)」の3つで、結果をもとに意見交換を行いました。この活動を通じて、児童は「広告があることで無料で情報を得られるが、広告がなければ誰かが費用を負担しなければならない」という現実を理解し、情報の価値や公平性について考えるきっかけを得ました。

TSUNAGU Proによる結果表示(※一部)

終結:無償情報の価値を評価する

 終結では、ブレイクアウトルームのファシリテーターが話合いの結果を共有し、授業全体を振り返りました。児童は「広告があるおかげで、私たちは多くの情報を無料で得られる」という結論に達し、情報産業の仕組みを生活に結びつけて考える力を養いました。 「広告なしで情報を得るためには、誰かがお金を払わなければならない」という本質的な理解を確認しました。

TSUNAGU Proによる話合い全体の要約

見る人が払う派、税金でまかなう派、会社の広告で無料にする派が対立。広告は「邪魔」「役立つ」で評価が分かれ、公平さと費用の出どころを比べて考えていた。

TSUNAGU Proによる各学級の話合い内容の箇条書き(一部)

 今回の授業は、フリーペーパーからインターネットサービスまで、情報産業の収益構造を多角的に学ぶ機会となりました。児童は、広告の役割や課金の仕組みを理解し、情報の価値を主体的に考える姿勢を身につけました。今後は、情報を受け取るだけでなく、その背景にある経済的仕組みを意識し、より賢く情報を活用できるようになることが期待されます。

この授業実践の関係者

授業実施者(Ch1):草原和博
授業実施者(Ch2):瀧本耕平,大谷哲也,近藤郁実,井手歩実
授業補助者:各小学校での授業担当教員
プレスネットからの中継:小笠原周哉,宮本侑弥
学校技術支援担当(東広島市内小学校):横田亜美,南浦涼介,藤本真奈,新谷叶汰,三井成宗,大畑澄佳,西川俊,神田颯,濵田莉緒,蓮見千颯,松岡佑奈,圓奈勝己,上中蒼也,手嶋高嶺
学校技術支援担当(広島市内小学校):川本吉太郎,小島拓歩,森涼夏,湯川茉琴
学校技術支援担当(北海道内小学校):大戸玲穂,佐々島忠佳
事務局機器担当①(広島大学):草原聡美,井戸浩太
事務局機器担当②(高屋西小学校):宇ノ木啓太,山口祐樹,石黒陽菜

この記事を書いた人
SIP staff
三井・川本・宇ノ木・神田

「デジタル・シティズンシップ・シティ:公共的対話のための学校」プロジェクトメンバーである三井・川本・宇ノ木・神田が更新しています! ぜひ、本記事を読んだ感想や疑問・コメントをお寄せください!