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【みなみうら奮闘記vol.4】授業を考え,チラシを作ってみた

2024.08.02

南浦 涼介(広島大学)

「日本語をやさしく話す」ってどういうこと?―授業の柱を考える

今回,広域交流型オンライン学習「多文化共生編」の授業の第1弾のテーマは「やさしい日本語」である。

「日本語をやさしく話す」ってどういうこと? 誰に対して何のために?
を小学生たちと考えていくための授業だ。東広島市は実際,外国の人が多く住んでいる。実は,中国・四国地方のなかで人口に対してもっとも外国人の住む人の割合が多い町だ。特定技能(技能実習)の人たち,留学生,生活する人,子ども,難民の人,いろいろな外国人が住む。加えて,この時代にめずらしく,人口が増えている市(これも中四国で唯一)でもある。県外,市外からの入ってくる人も多い。

こうした町の中で,「やさしい日本語」をふまえた授業を考えたときにどういうことができるだろう?
そうしたことから,大きく2つの柱を授業活動として考えた。 

  • ①子どもたちにとって「日本語をやさしく使う」ことの最も身近な対象は,外国人に対してよりも,「小さい子どもに対して」だろうということ。授業はそこからはじめたい。(保育園につないで授業をする)
  • ②他方で外国人に対して話すときは,「日本語をやさしく」よりも「英語で」というイメージがつよくあるだろうということ。そのイメージをひっくり返す感じにしたい。(市役所につないで授業をする)

授業計画を練り上げる―大学・市教委との共同検討会を通じて

大学・市教委との指導案検討会でこの2つの柱から大枠を説明したところ,「技能実習生」(注:現在は「特定技能」の在留資格の人も多い)を入れるというのはどうかというアイデアをもらった。というのも,どうしても市役所と保育園だけだと,「街のつながり」として東広島市の中でも旧西条町内だけの話になりやすい。
「東広島市」自体がさまざまな市町が合併してできたこともあり,かつ,多くの施設や人口が西条町に集中しているため,むしろ授業で「市」を扱うときは,子どもたちがいろいろな地域から参加することもあり,いろいろな地域を登場させることも大切だ── という意見で「なるほど!」と思った。
外国人のことだけじゃなく,この町は過密と過疎,中心的な場所とそうでないところ,さまざまな視点が大切なのだということを改めて知った。(このことは,「東広島」をイコールのように「西条」と呼んでしまう広島大学の大学生にとっても重要な目線ではないかなとふと思う)

こうしたことから,授業でつかう材になる取材場所として「保育園」「市役所」「牡蠣業者」の3つに決まった。(牡蠣業者はスタッフの川本さんがつながりを活かして,森尾水産さんに連絡をしてくださった。こういうつながりの蓄積はほんとうに,この事業のこれまでの力だなと思う)

こうして最終的にでき上がったのが,次のチラシだ。

学校に配布する授業案内チラシ

立ちはだかる2つの困難―参加者をつのる、授業をつくる

さて,ここからが難題になる。おもに次の2つ。

1つは,これまでやってきた社会科と違って,「既存の単元」があるわけじゃない。総合的な学習の時間で提案していたものの,多くの学校では(特に東広島市では)自治体で共通の総合的な学習の時間のカリキュラムが設定されていて,それで動いている。そうしたことから,学校の先生にとってみれば「学校で行う授業の代わり」ということにならなく,純粋な「投げ入れ」ということになる。それで手を挙げてくれるだろうか……というのがチームスタッフのいちばんの心配事だった。ただ,学校のことを考えてみれば,それぞれの学校で「いいな」と思って手を挙げてくれることが大事なので,こちらからむりに推すわけには行かない。ここは,チラシをわかりやすくすることで「伝える」ことと,何回かやっていく中で「いいなあ」と思ってやりたいと思える場を地道に増やしていくしかない。ということになった。学校のことを考えるとそれがきっといちばんだろう。

2つめは,取材と授業づくり。この時点で5月に入っていて,ここから一気に外部へ取材をお願いしたりするには,僕一人ではとうてい無理で,チームの力が問われることになるのだけれど,本当にうまく作っていけるのだろうかと不安だった。このあたりはこれまでの経験をチームの人たちが持っていることに半ば委ねる形で,僕自身が信頼を置いていくことが大事。

残りひと月。授業づくりが加速していく。果たして学校は手を挙げてくれるのか? 授業はできるのか?(次回に続く)

この記事を書いた人
Ryosuke Minamiura
南浦 涼介

2023年の春に広島大学にやってきました。「先生」の仕事は23年目,大学の先生の仕事は14年目,広島大学の先生の仕事は2年目の古米のような新米です。授業や多文化共生の教育の仕事が大好きですが,ラーメンも好きです(最近控え中)。