アクティビティ

【みなみうら奮闘記vol.6】運営スタッフと打ち合わせをした

2024.08.16

南浦 涼介(広島大学)

23時,帰宅・・・

23時,帰宅。子どもも奥様もすでにすやすやと寝息を立てていた。 
ご飯をダイニングで食べながら,明日も1コマだから早く寝なければと思いながら,頭の中は今日の指導案検討を思っていた。 
指導案のファイルを開いてみると,一番上にあるのは「ver.4.0」とある。小数点以下と1桁目に余り意味の違いはないので,これは指導案として4回目の指導案ということだ。 
そう,ついに4回目の指導案検討を経て,家に帰ってきたのだ。 
「働き方改革」が世間を席巻する中で,おそらく全国でもこんなに遅くまで指導案を検討したのは今日は僕だけだったはずだ……! 
いそいで言い訳をしておくと,もちろんこれは,「奮闘記」でありうちの職場の「働き方改革」を促す文章ではない。(ちょっと星新一っぽい文体でモーレツ高度経済成長期のサラリーマンの家庭の描写風にしただけです) 
いや,もうね,ほんとうに久しぶりに小学校の授業案をつくっているわけで(詳細は第1回),感覚がぜんぜんできあがっていない。ほんとうにわかってない。 

なおこれは「ver. 2.0」だったもの。このときは,よもやこんな深夜の集いがあるとは……である 。

通常の授業と広域オンラインの授業の「違い」のはざま

大学の授業でもけっこう発問や対話を考えているのだけれど,学び手(学生)が大学生の場合,また,関係性ができている場合,同じ教室の中ではそれほど緻密に考えていなくても,「まあたぶんこのくらいで動くだろう」というのがある。小学校の授業でも本来はそういうところがある。 

ただ,今回の授業は,おそらく「このくらいで動くだろう」があまり許容されない。それは, 

  • 子どもたちとの関係性はできていない,一見様である 
  • オンラインの向こうの学校の関係性はもっとできていない 
  • それぞれの担任の先生が板書をしたり,指示ができるようにしておかないといけない 
  • 取材など中継先とつなげるためには時間進行が明確でなければならない 
  • その上で子どもたちに考えたり話をしてもらう(かつオンラインで相互に) 

ということをしなければならないという,「かなり特殊で難しい」場面がいくつも存在しているのであった。最初は指導案もなんとなく行けるだろうと考えてもいたのだけれど,5回目くらいの検討から「これはもう緻密にやらないとまずい」感じがひしひしと感じてきた。

教職人たちは夜も集う

市教委との連携を考えてくれている三井先生,もと学校の先生で院生をされている宇ノ木さんと,大学の部屋で「こういう動きがいいんじゃないか」「僕だったらこういう長し方を考えますね」「実際にここでやってみましょう」「うーん,流れないな」という試行錯誤。 
気づけば22時。付き合ってくれているお二人に加えて草原先生も来て,授業シュミレートが延々と続く。 
とくに授業の後半,取材で牡蠣業者さんの端的言葉の中に,「やさしさ」がどうこもっているのかというところを考えるのはほんとうに至難の業。そして,こういう所では確実にこれまでのオンライン授業をされてきた歴戦の3人の感覚がものをいうところで,正直僕は新参者,でてくるアイデアに「ああなるほど……」「はあ,たしかに……」「それでいきましょう」とオウム返しのように呟いているだけだった気がする。新しい場では人は誰しも無能者に一時なるのだけれど,きびしい夜だった。何よりも,それをやりながら,三井先生,宇ノ木さん,草原先生が「面白い!」「楽しい!」と呟いているところに,ちょっと忘れていたけれど「授業の職人(教職人)」ってこういうやつだったと改めて思い出した。(たまに僕も大学の関係者に「授業を凝る職人」と言われることがあるのだけれど,こういう新しい場ではただの素人,無能の人であった) 

冒頭に戻るけれども,働き方改革の中で本来「授業づくりに時間を」という先生たちの言葉が,最近はともすると「授業づくりすら時短を」という言葉も見られるようになり,こうした「職人の対話」の姿は,今日本でとても貴重なのかもしれない。  家に帰りながらそんなことを思っていた。

こちらはその後できた「Ver.4.2」。「Ver.2.0」と比べると展開がかなり変わっていることが見て取れる 。
さらにここからもうちょっと変わります。

いよいよ次回・・・!

さて,打ち合わせは別の日も続く。できあがった授業案「ver4.5」はさすがに完成度も高い。これをつかって今度は学校現場の先生たちとの打ち合わせ。そして機器運営の学生スタッフとの打ち合わせと続いていく。  上に挙げた5つの視点をふまえていくと,たしかにこの「全員が流れを把握する」ということはとても大切で,スタッフでどんどん打ち合わせが進む。学校の先生もなんとか安心(かどうかは実際はわからないのだけれども)してもらい,学生スタッフとの打ち合わせも終了。いよいよ,次回は実践になったのである。

この記事を書いた人
Ryosuke Minamiura
南浦 涼介

2023年の春に広島大学にやってきました。「先生」の仕事は23年目,大学の先生の仕事は14年目,広島大学の先生の仕事は2年目の古米のような新米です。授業や多文化共生の教育の仕事が大好きですが,ラーメンも好きです(最近控え中)。