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【みなみうら奮闘記vol.7】学校の先生方と打ち合わせをした

2024.08.30

南浦 涼介(広島大学)

学校の主役は子どもたちであり、先生方である

前回の記事で,「次回はいよいよ実践」と書いたのだけれども,もう一つのシーンの大切さがあった。急いで撤回してそのことを書いておきたい。 
それは,「ホスト校との打ち合わせ」をはじめとする学校の先生方との打ち合わせである。これまでの連載記事は,その多くが「自分がどう作ったか」という点からのものだったわけだけれども,本来学校の主役は子どもたちであり先生方である。授業も当然のことながら,先生方との連携なくしては成立しない(このことは実際の授業になったときにまざまざと感じることになった)。 

2回にわたる学校の先生との打ち合わせ

学校の先生との打ち合わせは大きく2つある。1つは,「事前説明会」という形で,オンラインで実施校の先生方と打ち合わせるもの,もう1つは,ホスト校(授業者になる僕などが実際に授業を行う教室の学校)の先生との場の設定に関する打ち合わせだ。 

関係性ゼロからはじまるオンライン事前説明会

まず,ようやく完成した指導案をもって,事前説明会。 

以前の記事でも書いたが,もともとこの「多文化共生型」の授業は既存の教科に当てはまらず,投げ込み的な側面が多い。だから学校としても既に動いている計画をやりくりしなければならないことがあり,そこにどう授業が入るかというところがとても難しいものだった。東広島市内の小学校でそれでも2つの学校(三津小学校と造賀小学校)が手を挙げてくださったのだ。 

実は,これまで僕自身,学校の先生方と打ち合わせるということは何度もあったのだけれど,それはあくまで,自分自身でゼロからお願いをするものだったり,先方とニーズをすりあわせてゼロからつくるものが基本だった。ただ今回は随分とその様相が違う。スタッフの方がもともと教育委員会の方だったこともあって,学校との折衝はそこで行われている。ある意味で「授業をすることに特化している」役割の僕。そして学校との折り合わせの中でつくるのでもなく,こちらで用意したものを「説明する」という感じになる。学校の先生はオンライン越しで中身が理解していただけるのだろうか。また,スタッフの先生と話しながら「本当は向こうの先生がどんなふうに授業をするのかわかって,いっしょにする感じが一番いいんですよね」ということを仰られていた。オンライン越し,また関係性がこれまでゼロであったところからの「いっしょに」というのはかなり難しい……というところだった。 

たぶん,この塩梅をつくるのは,現時点なのかもしれないな,と思っていた。おそらく前回までにやり直しをしてきた指導案でも,その構成から「一緒にする」という感じにはなっておらず,基本的に僕が指示をして発問をして,子どもを動かすような形になっていたからだ。(実際,そうするのだと思っていたため,指導案検討の時に草原先生が「私はどういう立ち位置で何をするのか」と聞かれたときまで,実は授業を2人ですると言うことを知らなかったのだ。そのため,この第1回の授業は草原先生の登場もそれほど多くない結果となっている。それはこうした認識からだった) 

まずは,そうはいってもこの学校間連携の授業を自分が回せるようになること。ここにいったんは絞ってすることが大事だと思い直した。 

実際,「事前説明会」の場では,もともと時間がたくさん無かったこともあって,かなり早口で指導案を「なぞるように」説明せざるを得ず,伝わったのかどうかほんとうにわからなかった。夕方の時間,先生方の退勤時間を考慮しながらの設定,きっと向こう側にいた教育委員会の方がフォローしてくれたのではないか……と反省しきりな思いで終わった。 

対話は必要,しかしオンライン上と限られた時間という制約の中でどこまでできるのか。この問題は学校の仕事の中でも,異業種の交流ということの中でも常につきまとう。だからだろうか,「大丈夫です」と画面の向こうの先生方はおっしゃった。ありがたいし,ぼくらは確かに「なんとなくわかった。あとは信頼しよう」の塩梅でしか動けない。画面の向こう側にほのかに見える見知らぬ学校の教室の世界を想像しながら,その世界の人たちが安心して動けるような気持ちで動くしかないのだ。コミュニケーションとは本来そういうことだ。と改めて思った。 

ホスト校での事前打ち合わせ

明けてホスト校となる造賀小学校との調整の日。教室の設定と先生とのご挨拶で伺うと,とても驚いた。それは,先生なりにあのときの説明会から,ねらいの短冊などの板書用の道具をすでにつくってくださっていた。ああそうか,あのときの拙い説明でも,先生がたも自分の授業でもあって,こうやって動いてくださっているんだなと改めて思わされた。 

「どうぞ当日もよろしくお願いします」 

とお互いに言いあった。まさに「相手の世界を想像しながら,安心して動いてもらえるようにこちらも動く」を相互にこめた言葉だったように思う。 

この記事を書いた人
Ryosuke Minamiura
南浦 涼介

2023年の春に広島大学にやってきました。「先生」の仕事は23年目,大学の先生の仕事は14年目,広島大学の先生の仕事は2年目の古米のような新米です。授業や多文化共生の教育の仕事が大好きですが,ラーメンも好きです(最近控え中)。