授業実践

【歴史との対話】歴史的な見方・考え方とは何か?ー今の東広島市を表す年表を通して考えようー

2025.09.29

指導案・教材・YouTube動画

授業の概要

2025年9月29日(月),中学校1年生を対象とした広域交流型オンライン学習「歴史的な見方・考え方とは何か?-今の東広島市を表す年表を通して考えよう-」を実施しました。本授業には,東広島市内の中学校4校(志和中学校,福富中学校,豊栄中学校,河内中学校)の1年生78名と,スペシャルサポートルームや教育支援センターに通う子どもたちが参加しました。授業の全体進行は,広島大学の川口広美准教授と草原和博教授が担当しました。各教室では,教科担任(T2)と大学・教育委員会から派遣されたサポートスタッフ(T3)が連携しながら授業を運営しました。

本時の学習課題は,「歴史的な見方・考え方を使って,歴史のメッセージを読み解き,歴史のメッセージを作ろう!」。子どもたちは,市の年表『東広島市のあゆみ』を題材に,歴史的な見方・考え方を働かせながら学習に取り組みました。「歴史を読み解く」「歴史を描く」という2つの活動を通して,歴史学習の意味やおもしろさを考える時間となりました。

導入:歴史を読み解く

授業の導入では,子どもたちが「過去」と「歴史」の違いに目を向ける活動から始まりました。まず,自分たちが暮らす地域の歴史を題材に,「東広島市のあゆみ」に記された出来事の中から,特に重要だと思うものを1つ選び,その理由を考えました。例えば,「ダムができたことが載っている。福富町には水源がないので大事」,「山陽自動車道が開通したことが載っている。人がたくさん来るようになったので大事」など,東広島市の生活や発展に関わる出来事を挙げる姿が見られました。

一方で,「東広島市のあゆみ」に載っていないけれど,自分たちのまちにとって重要だと考える出来事にも目が向きました。「福富の大事なイベントであるアクアフェスタが始まったことが載っていない」,「1991年に河内の多くの人が住む団地グリューネン入野ができたことが載っていない」といった声が上がりました。

こうした子どもたちの疑問に応えて,「東広島市のあゆみ」を作成した市役所の職員にインタビューを行いました。職員からは,「紙面には限りがあるため,市のあゆみに描く内容は絞る必要がある」,「学園都市や交通都市,国際都市といった東広島市の今を形づくる視点から重要と判断された出来事を選んでいる」と説明がありました。さらに,草原和博教授からは,「過去は,過去に起きた出来事すべてを指すが,歴史は,その中から大事なことを選びとった物語である」との話がありました。

こうした導入を通して,子どもたちは「なぜこの出来事が選ばれているのか」「なぜ載っていないのか」といった問いに向き合いながら,「歴史的な見方・考え方を使って,歴史のメッセージを読み解き,歴史のメッセージを作ろう!」という本時のテーマへの関心を高めていきました。

展開1:お試しで歴史を描く

展開1では,子どもたちは,歴史的な見方・考え方を使って,歴史を描いてみる活動に取り組みました。ここでは,「X市に大きな道路が開通した」という出来事の評価を出発点に,カードから出来事を選び,時系列に並べて物語をつくることで,まちの「歴史」を仮想的に描くシミュレーション活動を行いました。 福富中学校や志和中学校では,例えば,「道路の開通」→「バスや自動車などの交通量が増えた」→「隣接する大きなY市へ通勤する人が増えた」→「X市に移り住む人が増えた」→「沿道にショッピングモールや飲食店が増えた」といった出来事をつなげ,「大きな道路の開通は良いことだ」というメッセージを描きました。 一方,河内中学校や豊栄中学校では,「X市に大きな道路が開通した」→「バスや自動車などの交通量が増えた」→「X市に移り住む人が増えた」→「沿道にショッピングモールや飲食店が増えた」→「昔ながらの商店街の店の数が減った」といった流れで,「大きな道路の開通は悪いことだ」というメッセージを描きました。 同じ過去の出来事を出発点としても,その過去をどのように伝えたいのか,そのためにどのような過去の出来事を選び,どうようにつなげるかによって,描かれる歴史は大きく変わることを子どもたちは実感しました。活動の最後には,各学校のストーリーを比較することで,どのような視点から出来事を見るか,どのようなつながりを重視するかが,歴史を描くうえで大切であることが確認されました。

展開2:私たちの市の歴史を描く

展開2では,子どもたちが「自分たちの地域の歴史を描いてみる」ことに挑戦しました。各学校では,Googleスライド上で,自分たちなりの『東広島市のあゆみ』を作成するグループ活動に取り組みました。活動は,以下の手順で進められました。

年表の作成手順

① グループごとに「テーマ(国際都市 or 交通)」を設定する
② テーマに関する出来事を選ぶ(『あゆみ』から8個以内で選ぶ,年表にのっていない出来事を2個まで追加可)
③ 出来事を古い順に並べる
④ 出来事を「発展」または「衰退」の視点からグラフに表す
⑤ グラフをもとに,歴史の説明文(メッセージ)を作る

完成したスライドには,それぞれのグループが選んだ出来事とメッセージが整理されており,子どもたちが歴史的な見方・考え方を用いながら,主体的に意味づけを行ったことがうかがえました。

例えば,豊栄中学校の「国際都市」をテーマにしたグループでは,1980年のブラジル連邦共和国マリリア市との姉妹都市提携を出発点に,1993年の中国・韓国との都市提携,1997年の国連英語バイパス講義の実施,そして2010年の国立研究開発法人・産総研中国センターの設立までを「発展」として描き,「国際的な交流が広がり続けた東広島市」というメッセージを打ち出しました。

一方,福富中学校の「交通」をテーマとしたグループでは,1988年の山陽新幹線東広島駅の開業や1990年の山陽自動車道の開通,2015年の東広島・呉道路の全線開通などを取り上げ,移動の利便性が高まったことで「人が集まりやすくなった東広島市」を表現していました。

各グループが作成した「東広島市のあゆみ」をオンラインで共有し,それぞれが描いた歴史を見比べました。同じ「交通」や「国際都市」というテーマであっても,取り上げられた出来事やそのつなぎ方は異なり,伝えようとするメッセージも多様であることを目の当たりにし,子どもたちは互いの歴史観の違いに気づいていきました。

終結:これからの歴史学習

終結では,子どもたちの成果物に対する講評やふりかえりが行われました。

まず,草原教授からは,「多くのグループが発展を登り坂で表現していたこと」や「ブールバールという出来事が複数のグループで重なって取り上げられていたこと」に注目し,子どもたちの成果物を評価しました。その上で,「今から見て何が重要か(現在とのつながり)」「出来事同士をどのようにつなげるか(相互の関連)」「どの視点・立場から歴史を見るか(比較)」といった歴史的な見方・考え方が意識されていたことを指摘し,特に「現在とのつながりはよく使えていた」とコメントしました。続いて,「東広島市のあゆみ」の作成に携わった市役所の職員からは,「広島空港やアストラムラインなどの交通網が整備されたからアジア大会を誘致することができ,国際化が進んだ」という説明がありました。この発言を通して,交通と国際都市といった異なるテーマが相互に関わり合いながら,歴史が形づくられてきたことが浮かび上がりました。

最後に,川口広美准教授からは,「今回学んだ歴史的な見方・考え方を,これからの歴史学習でも活用してほしい」との言葉があり,本時の学習が今後の歴史学習へとつながることが示されました。

歴史を描く市民の育成

今回の実践では,歴史的な見方・考え方を活用して,歴史を主体的に構成することを目指しました。授業後のアンケートでは,「歴史を作ることで,東広島の歴史の作り方の構成や大事な部分がどこなのかを詳しく知ることができた」「過去の出来事は,人が見る順番や取り上げた出来事によって,良いことにも悪いことになる」といった声が見受けられました。また,「あゆみに書いていないけど大切な歴史が地域によって違う」のように,学校とつながったことで現れた気づきも見られました。本プロジェクトでは,引き続き,学校と学校をつなぎ,対話や発信ができる市民の育成をめざした授業を提案してまいります。

この授業実践の関係者

授業実施者(Ch1):川口広美,草原和博
授業実施者(Ch2):瀧本耕平,中西美里,川本吉太郎,三井成宗
授業補助者:各中学校での授業担当教員
東広島市役所からの中継:神田颯,藤田陽輝
学校技術支援担当(東広島市内中学校):手嶋高嶺,小島拓歩,新谷叶汰,井戸浩太,伊藤花菜子,蓮見千颯
事務局機器担当①(広島大学):草原聡美,岩切祥
事務局機器担当②(東広島市立福富中学校):宇ノ木啓太,上中蒼也,山本成瀬
ブレイクアウトルームファシリテーター:草原和博,吉田純太郎,川本吉太郎,三井成宗,神田颯

この記事を書いた人
SIP staff
三井・川本・宇ノ木・神田

「デジタル・シティズンシップ・シティ:公共的対話のための学校」プロジェクトメンバーである三井・川本・宇ノ木・神田が更新しています! ぜひ、本記事を読んだ感想や疑問・コメントをお寄せください!