概要
2026年3月9日(月),米国カリフォルニア州の5校6学級(小学校2~6年生)が繋がり,「Shared Stories, Unique Lenses: Digital Citizenship Cities」をテーマとする遠隔授業を実施しました。本授業は米国カリフォルニアにて初めて実施されるDCC授業であり,3回シリーズの単元の第3時間目です(第1時間目の様子はコチラ)(第2時間目の様子はコチラ)。参加校は以下の通りです。
・Mistwood Educational Center(Bayside)
・Oakmont Outdoor School(Claremont)
・Valentine Elementary School(San Marino)
・Toluca Lake Elementary(North Hollywood)
・Sutherland Elementary(Glendora)
授業全体の進行は Sutherland Elementary の Cathy Marston 先生,授業のコーディネートはカリフォルニア州立ポリテック大学ポモナ校の Rebecca Valbuena 先生が務めました。また各学級の指導は,各校の担任の先生方(Shasta Werthman,Imetra Joiner,Rosemary Girgis,Rick Lee,Jack Dunaway)が務めました。今回は各クラスが「Root Cause Tree(根本原因ツリー)」を用いて分析し,実際に取り組んでいる「シビック・アクション(市民活動)」の成果と計画をオンラインで共有しました 。
導入:コミュニティにおける課題とみんなの願いの共通性
授業の冒頭,進行のCathy先生は「10月にコミュニティについて学び始めてから,ついにここまで来ました」と半年間の歩みを振り返りました 。 Cathy先生のクラスでは,プレゼン前に「他のクラスはどんな課題を抱えていると思う?」と話し合った際,児童たちから「きっと自分たちと同じような問題を抱えているはず」との意見が多く示されたといいます 。地理的に離れていても,コミュニティをより良くしたいという願いと,直面している課題には「共通性」があることが改めて確認されました 。


展開:みんなの「Civic Action Project(シビックアクションプロジェクト)」
各校の児童たちは,自分たちが「社会科学者」として見つけ出した課題と,それに対する具体的なアクションを発表しました。
児童たちは,近隣の高齢者施設「Pilgrim Place」に住む人々との交流を企画しました 。
【課題と原因】
施設に住む人々の中には,家族がいなかったり,記憶を失っていたりして,社会との繋がりを必要としている人がいることを「根本原因ツリー」で分析しました 。
【アクション】
児童たちは応援のメッセージを書いた「ポストカード」を作成し,送付することを決めました 。
【工夫】
学校の特色である「野外学習(Outdoor Science)」の視点を活かし,将来的には高齢者の方々にペンパル(文通相手)になってもらったり,学校の庭(バイオーム・ガーデン)のボランティアとして招待したりすることで,世代間の架け橋を築くことを目指しています 。
急増するE-bikeの安全性と責任ある利用について提案しました 。
【課題】
速度が時速20マイル(約32㎞/h)を超えることもあるE-bikeが,歩道で歩行者と接触しそうになるなどの危険性が指摘されました 。
【アクション】
安全ルールを伝える「啓発ビデオ」の作成や,学校での安全講習の実施,さらに市に対して「専用レーンの増設」を求めるなどの解決策を提示しました 。
校内の食品廃棄問題に焦点を当てました 。
【課題】
クラス全体で,朝食や昼食の際に多くの食べ物が捨てられていることに気づきました。これまでに食べ物を準備するには,食料だけではなく,エネルギーや資源も無駄にしていることを学んでいました。
【アクション】
まず「どの食品が最も捨てられているか」を調査するためのチェックリストを作成しました 。さらに,未開封の食べ物を無駄にしないための「シェア・ビン(共有箱)」をランチコートに設置するアイデアや,啓発ポスターの掲示,校内放送での呼びかけなどを計画しています 。最終的には,調査結果を校長先生に手紙で報告し,メニューの改善や食事時間の確保を提案する予定です 。
校内のゴミ問題を解決するための清掃グループを結成しました 。
【課題】
学校内でごみが散らばっています。
【アクション】
「Paws for a Cause」というグループ名で,毎週火曜日にゴミ拾いを実施しています 。ゴミ箱からゴミが溢れている現状を目の当たりにし,自分たちの手で環境を守る活動を開始しました。
社会的な課題である「子どものヘルスケア」について議論しました 。
【課題】
経済的な理由で十分な医療を受けられない子どもがいる現状を問題視しました 。
【アクション】
情報発信キャンペーンを展開し,請願書を作成して署名を集める計画です 。QRコード付きのポスターを街に掲示し,地元の選挙で選ばれた公職者に直接手紙を送ることで,政策への反映を求めます




まとめ:変化を起こす「Voice(声)」
各学校の発表後,クラス間で活発な質疑応答が行われました。その一部について紹介します。
①については以下のように質問と回答がありました。
Q1:高齢者施設への手紙の内容について
質問:手紙には具体的にどのようなことを書いたのですか?
回答:相手の一日が少しでも良くなるようなメッセージや,自分たちの学校生活の様子を書きました 。また,裏面には可愛い絵をたくさん描き,自分たちがより若い世代であることを伝えました 。
Q2:高齢者施設との継続性と返信について
質問:これまでに何度手紙を書きましたか?また,施設の方から返事は来ましたか?
回答:先週の金曜日に始めたばかりで,これから送るところです 。単に手紙を送るだけでなく,ペンパル(文通相手)になって,将来的に私たちの学校のガーデンプロジェクトなどを手伝ってほしいと考えています 。
④については,以下のように質問と回答がありました。
Q3:活動がコミュニティに与える影響について
質問:「Trash Tuesdays(ゴミ拾い火曜日)」を始めてから,その活動は他の生徒たちにも広がっていますか?
回答:はい,(他の人にも広がり)コミュニティ(学校)に変化が見られます 。
⑤については,以下のように質問と回答がありました。
Q4:ヘルスケアという大きな課題を選んだ背景について
質問:どこから「医療(Healthcare)」というアイデアを思いついたのですか?コミュニティのどのような要因を見て,これが問題だと考えたのですか?
回答:経済的な理由で医療費が払えない人々がいることを知ったからです 。子どもたちの医療のために大人が高い税金を払わなければならなかったり,それが原因で借金を抱えたりする現状があることを話し合いました 。
Q5:行政や公職者からの反応について
質問:ヘルスケアの課題について,連邦政府や州の役人は何か反応をくれましたか?
回答:まだリサーチをまとめている段階で,これから送る予定です 。選挙で選ばれた公職者に手紙を送る際は,必ず返信を求めるようにするつもりです。
各校の発表が終わるごとに,子どもたちが自発的にチャットへ質問を書き込み,マイクに向かって意見を述べる姿は,単なる「学習発表会」の枠を超えたものでした 。
特に,自分たちの地域に直接関係がない他校の課題(例:他校の医療費問題や清掃スタッフ不足)に対しても,「なぜその問題が起きているのか」「自分たちの地域の状況とどう違うのか」という関心を持ち続け,集中して耳を傾けていた点が特筆されます 。このように,異なる地域の児童同士が共通の公共的課題について対話し,互いの知見を補い合うプロセスこそが,まさに「公共圏」が形成された瞬間であったと言えます 。
Cathy先生は最後に,「あなたたちの声はとても重要であり,変化を起こす力を持っています」と子どもたちを激励しました 。プロジェクトの進捗やデータ,手紙の内容などは,今後もPadletを通じて共有され,5つの学校の交流は続いていくことになります 。




DCCの海外展開:継続的な交流とアクションへ
今回の授業は,米国における「デジタル・シティズンシップ・シティ」が単なる異文化交流の枠を超え,実社会の課題解決を志向する「シビックアクション」へと結実したことを示しています。
米国特有の多文化・多層的なコミュニティにおいて,子どもたちが「違い」を認めつつも「共通の課題」を見出し,デジタルの力を借りて連帯する姿は,まさに次世代の市民教育のモデルと言えます。東広島市から始まったDCCの知見が,カリフォルニアの地で子どもたちの主体的な行動を引き出し,地域社会を動かす力へと進化したこの成果は,今後のグローバルな教育実装に大きな示唆を与えるものです。
この成果を携え,2026年5月にはついに日本の学校とのグローバルな対話が始まります。「市民として自分のコミュニティをよりよくするために何ができるか」――日米の子どもたちがそれぞれの場所で見つけた答えを共有し,新たなアクションへと繋げていきます。

授業実施者:Cathy Marston
授業補助者:各小学校での授業担当教員(Shasta Werthman,Imetra Joiner,Rosemary Girgis,Rick Lee,Jack Dunaway)
コーディネーター:Rebecca Valbuena
配信機器担当:金鍾成
「デジタル・シティズンシップ・シティ:公共的対話のための学校」プロジェクトメンバーである三井・川本・宇ノ木・神田が更新しています! ぜひ、本記事を読んだ感想や疑問・コメントをお寄せください!
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