概要
2026年1月12日(月),米国カリフォルニア州の5校6学級(小学校2~6年生)が繋がり,「Shared Stories, Unique Lenses: Digital Citizenship Cities」をテーマとする遠隔授業を実施しました。本授業は米国カリフォルニアにて初めて実施されるDCC授業であり,3回シリーズの単元の第2時間目です(第1時間目の様子はコチラ)。参加校は以下の通りです。
・Mistwood Educational Center(Bayside)
・Oakmont Outdoor School(Claremont)
・Valentine Elementary School(San Marino)
・Toluca Lake Elementary(North Hollywood)
・Sutherland Elementary(Glendora)
授業全体の進行は Sutherland Elementary の Cathy Marston 先生,授業のコーディネートはカリフォルニア州立ポリテック大学ポモナ校の Rebecca Valbuena 先生が務めました。また各学級の指導は,各校の担任の先生方(Shasta Werthman,Imetra Joiner,Rosemary Girgis,Rick Lee,Jack Dunaway)が務めました。今回は前回定義した「コミュニティ」の概念を土台として,社会課題を構造的に把握することを目指しました。


導入:冬休みの共有とコミュニティの再確認
授業は,冬休み明けに再会した子どもたちの近況報告から温やかに始まりました 。Cathy 先生は,それぞれのクラスで「冬休みにした活動のトップ3」を話し合うよう促しました 。
子どもたちからは,ビデオゲームに没頭したこと,家族との旅行や初めての場所への旅行,雪遊び,ディズニーランドへ行ったことなど,多様なエピソードが共有されました 。多くの子どもたちが家族というコミュニティで過ごしたことを確認し,Cathy 先生は,これらの共通の経験がコミュニティを形成する「共通の関心(Common Interests)」であることを改めて伝えました 。
そして同時に,「もしコミュニティが自分たちをサポートしてくれず,歓迎されていないと感じる人がいたらどうすべきか?」という問いを投げかけ,コミュニティの全員が価値を認められ,ニーズが満たされる場所を作る責任に注目させました 。




展開:「Root Cause Tree」をつかってみよう
子どもたちは,まず事前に紹介された本やこれまでの経験をもとに,コミュニティのメンバーが互いに助け合っている次の事例を紹介しあいました。
・ホームレスの人への衣類寄付
・昨年の火事で家を失った人への支援
・ゴミ拾い
・食料配布センターへの協力
・フードドライブ
これらの発表を受け,Cathy 先生はこれらの事例について,「それぞれのコミュニティに潜む問題と,それを解決する方法や原因を特定することは難しい」と述べ,思考を整理するための「Root Cause Tree」というグラフィック・オーガナイザー(思考ツール)を紹介しました 。Cathy 先生は,木を例に挙げながら,次のように分かりやすく解説しました。
「木に元気がないとき,枯れそうな葉っぱ(影響)だけを見ても問題は解決しません。大切なのは,地面の下に隠れて見えない『根っこ(原因)』に目を向けることです。根っこが病気なら,いくら葉っぱに水をかけても木は枯れてしまいます。コミュニティの問題も同じです。『なぜその問題が起きているのか』という本当の理由(根っこ)を見つけて,そこを解決することが,みんなが輝けるコミュニティを育てるための近道なのです」
「Root Cause Tree」の具体的な活用法を学ぶため,まずは学校の問題について列挙しました。「仲間外れ」「ごみ問題」「食事のバランス」「校内を走る行為」「食料の廃棄問題」などが出されました。
次に参加校共通で「児童が授業の課題や宿題を終わせることができない」という身近な問題を例に子どもたちは「Root Cause Tree」を通して分析を行いました 。
【影響(Effects)についての分析】
子どもたちは,「知識や技術が身につかない」,「先生や親から叱られること」,「成績低下による卒業への支障」,「ストレスを感じること」などを挙げました 。また,他にも「Fun Friday(楽しい金曜日)を失ってしまう」や,「授業中にグループワークでの評判悪化(ほかの人が一緒にしたくなくなる)」といった影響も指摘しました 。
【根本原因(Roots)についての分析】
子どもたちは,「忙しすぎることや,急にほかにしなければならないことの発生」,「スクリーン依存(ネットやゲームのやりすぎ)」, 「学習内容への理解不足」 ,「時間の管理不足や,宿題のメモ忘れ」などの原因が挙げました。


まとめ:Cathy 先生からの挑戦状
授業の締めくくりに,Cathy 先生は子どもたちに新たな「挑戦状」を提示しました 。それは,これまでに自分たちがPadlet(意見共有ボード)へ投稿した地域の課題の中から一つを選び,今回の「Root Cause Tree」を使って徹底的に分析することです 。
「すべての原因を一度に解決はできないけれど,一つの根っこを選んでアクションを起こすことで,コミュニティをより良くできる」というCathy 先生の言葉を受け,子どもたちは次回,自分たちの分析結果とシビック・アクション(市民活動)の計画を持ち寄ることを約束しました 。
DCCの海外展開:継続的な交流とアクションへ
今回の米国における実践は,韓国での展開に続き,「デジタル・シティズンシップ・シティ(DCC)」の理念を世界へ広げる重要な試みとなりました。東広島市を中心に展開されるDCC授業の熱気に触れた両氏が,その教育的価値を米国の文脈で再構築したものが今回の単元計画です。米国の実践は日本の実践とは異なり,期間をあけながら継続的に実践をしています。今回はその2回目であり,1回目の10月に実施された授業から冬休みまでの間に経験したことや考えたことをもとに実践されました。
米国は,コミュニティの社会文化的・人種的な多様性が極めて顕著であり,時にはその「違い」が分断を生む課題も抱えています 。その中でも今回の授業はあえて「共通性」に注目をし,社会課題を構造的に分析する方法の獲得を目指しました 。冬休みの過ごし方や学校での課題など,一見個人的に見える経験の中に「共通する関心」を見出すことで,子どもたちは個人の問題を「コミュニティ全体の課題」として捉え直すことができました 。この「共通の土台」を築くプロセスこそが,次回の授業で展開される具体的なシビック・アクション(市民活動)を支える重要なステップとなります。東広島市の知見を継承しつつ,カリフォルニアの地で独自の進化を遂げる本プロジェクトの今後の展開にご注目ください 。


授業実施者:Cathy Marston
授業補助者:各小学校での授業担当教員(Shasta Werthman,Imetra Joiner,Rosemary Girgis,Rick Lee,Jack Dunaway)
コーディネーター:Rebecca Valbuena
配信機器担当:宇ノ木啓太
「デジタル・シティズンシップ・シティ:公共的対話のための学校」プロジェクトメンバーである三井・川本・宇ノ木・神田が更新しています! ぜひ、本記事を読んだ感想や疑問・コメントをお寄せください!
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