授業実践

【地域調査の手法を学ぶ】Googleマップは最強か?-『情報豊かな』地図の強みと弱み-

2026.05.22

指導案・教材・YouTube動画

概要

2026年5月22日(金),東広島市内中学校4校4学級(福富中学校,志和中学校,豊栄中学校,河内中学校)の2年生85名と北海道洞爺湖町立洞爺中学校1学級の2年生10名,各地の教育支援センターの子どもたちが参加し,遠隔授業を実施しました。今回の授業の主題は,「地域調査の手法を学ぶ-Googleマップは最強か?『情報豊かな』地図の強みと弱み-」。Googleマップの批判的分析を通して地図の性質を理解するとともに,実際に地図を描くことで地域調査の手法を体験的に学びました。授業では,広島大学の草原和博教授がコーディネーターを,担任の先生が各教室の指導を務めました。

導入:Googleマップは本当に最強か?

導入では,まず生徒たちに「普段,地理院地図を使うことがあるか」を尋ねました。カメラに向かって手で〇か×を示してもらうと,多くの生徒が「使わない」と回答。理由を聞いてみると,「見やすくてルートを教えてくれるGoogleマップを使うから」「たくさん情報があってわかりにくい」「等高線はいらない」といった声が挙がりました。このように,Googleマップのルート案内に慣れている生徒たちにとって,情報量の多い地理院地図はあまりなじみがないようでした。

ここで,4つの異なる地図(Googleマップ・地理院地図・広電路線図・観光マップ)を示し,「最も良い地図」はどれかを選ぶアンケートを実施しました。その結果,88%の生徒がGoogleマップを支持。生徒たちは,ルート検索ができること,現在地や所要時間が分かること,目的地まで迷わず行けることなど,Googleマップの便利さを高く評価していました。

この結果を受けて,草原先生は生徒たちに「Googleマップは神なのか?」と問いかけました。多くの生徒が手を挙げるなか,手を挙げなかった生徒からは「便利ではあるけど,圏外のときなど不便なところもある」という反応も見られました。Googleマップが便利であることは認めつつも,それだけですべての地図の価値を判断してよいのか,という問いが生まれました。

こうして,本時の学習課題である「Googleマップは本当に最強=「神」なのか?―さまざまな地図の強みを見つけよう!―」が提示されました。生徒たちは,Googleマップを基準にしながらも,地理院地図,路線図,観光マップにはどのような強みがあるのかを考えていくことになりました。

展開1:Googleマップの強みと弱み

展開1では,Googleマップ最強説を検証しました。各教室では,Googleマップと地理院地図・広電路線図・観光マップを見比べながら,Googleマップにはない強みがどこにあるのかを分析しました。

担当する地図は学校ごとに分担しました。志和中学校は地理院地図,豊栄中学校・河内中学校は広電路線図,福富中学校・洞爺中学校は観光マップを担当。生徒たちは,それぞれの地図が強みを発揮する場面や,情報の表し方の特徴を話し合い,最後にその地図の特色を一言で表しました。

各学級が提案した地図のひとこと特色

【観光マップ担当】
「見ていて楽しくて,誰でも使える観光に適した地図(福富中)」
「ワクワクする,老若男女が見やすい,すっきりした地図(洞爺中)」

【広電路線図】
「広電の情報に特化した迷わない地図(豊栄中)」
「カラフル,見やすい,広電路線図(河内中)」

【地理院地図】
「スマホが使えなくても標高が分かる地図(志和中)」

このように,生徒たちは,地図の比較・分析を通して,Googleマップが最強とは必ずしも言えないことに気づいていきました。草原先生は,各教室でのまとめを踏まえて,「①すべての情報は載せられない(強調・単純化)」「②目的に応じて情報を選んで表現している(選択・省略)」という地図の特色を共有しました。また,実際に地理院地図の縮尺を変えながら,情報が選択されることを共有しました。

展開1の最後には,再度,4つの地図のうち「最も良い地図」はどれかを選ぶアンケートをもう一度実施しました。その結果,84%の生徒がGoogleマップを支持したものの,地理院地図,広電路線図,観光マップを選ぶ生徒もわずかに増えました。このように,地図が目的に応じて情報を「強調・単純化」「選択・省略」する表現物であることを学んだ生徒たちは,次に,自分たち自身が地図の作り手となり,他校の生徒に伝わるルートマップづくりに取り組みました。

展開2:Googleマップに負けないルートマップをつくる

展開2では,他校の中学生が自分たちの学校を訪問することを想定し,学校まで迷わずに来るためのルートマップづくりに取り組みました。はじめに,生徒たちは地図帳を使って自分たちの学校のおおよその位置を確認。地図帳上の学校周辺を指さしながら,カメラ越しに他校の生徒へ場所を紹介しました。紹介を受けた生徒たちからは,小縮尺の地図では「おおまかな位置は分かっても,細かい道は分からない」「公共交通機関の情報や大きな道の情報が必要」という意見が挙がりました。ここで,「Googleマップに負けない地図をつくろう」という学習課題が提示され,「他校の中学生が,自分たちの学校を訪問する」「学校の最寄り駅からバスまたは徒歩で移動する」「スマホは使えない」という条件のもと,学校周辺のルートマップを作成することになりました。

作図に入る前に,広島大学の神田さんがルートマップの見本を示しながら,「建物や自然物などのランドマークを分かりやすく示す」「道の形を単純化して分かりやすくする」といった地図づくりのポイントを説明しました。さらに,三井先生が福富中学校付近のランドマークの一つである福富ダムから中継を行いました。実際の地域の様子を画面越しに確認することで,生徒たちは,地図上の情報と現地の景観を結び付けながら,どういう情報をルートマップに入れると相手に伝わりやすいのかを考えました。

これらのガイダンスを踏まえ,各教室では班ごとにルートマップの作成を始めました。生徒たちは,他校の生徒にとって必要な情報を選び,強調し,不要な情報を省略することを意識しながら地図を作成していきました。作成された地図には,駅やバス停,大きな道路,交差点,学校周辺の目印などが描き込まれ,それぞれの学校の地域の特徴が表れていました。

終結:ルートマップの相互批評

終結では,各校の代表生徒が,作成したルートマップを発表しました。発表では,学校までの道順だけでなく,どのランドマークを目印にしたのか,どの道路や交差点を強調したのか,どの情報を省略したのかなど,地図づくりで工夫した点が紹介されました。発表後には,他校の生徒が「その地図を見て学校まで行けそうか」という視点から感想を伝えました。

学級間のやりとり

●洞爺(発表):洞爺湖が右に見えていれば安心。レイクヒルファーム(アイス屋さん)が見えたら電車を降りる準備。
→河内(感想):イラストや所要時間が示されていて分かりやすかった。湖を一番の目印にしたい。
●河内(発表):ランドマークはバス停。川が左に見えていれば大丈夫。
→福富(感想):複数のランドマークや大きな通りの432号線があってわかりやすかった。
→洞爺(感想):建物が大事な情報だと分かった。
●志和(発表):ミスマ(スーパー)やセブンイレブン(コンビニ),ショージ(スーパー),T字路で右に曲がる。
→洞爺(感想):北海道にないお店が目印なので,見た目がわかると嬉しい。
→豊栄(感想):ショージは目印として分かりやすい。
●福富(発表):「湖畔の里福富」という大きな看板,福富支所を左に行く。
→志和(感想):看板が見えればバスを降りる準備をすればよい,というのがわかりやすかった。
→洞爺(感想):ガソリンスタンドの名前があると嬉しい。
●豊栄(発表):福富ダムが見えなかったらそのバスは間違えている。豊栄駐在所やジュンテンドー(ホームセンター)が見えたらバスを降りる準備。終点まで乗ってよい。
→洞爺(感想):バスに乗る時間も書かれていてわかりやすかった。

相互批評を通して,生徒たちは,分かりやすい地図とは,情報を多く載せた地図とは限らないことに気づいていきました。豊栄中学校の発表前には,三井先生が豊栄中学校付近から再度中継し,ランドマークになりそうな豊栄駐在所,豊栄中学校の看板,お寺の存在などを紹介しました。実際、豊栄中の発表には,実際に駐在所の情報が描かれていました。このように,展開1で学んだ地図の「強調・単純化」「選択・省略」という性質が,実際のルートマップづくりの中にも表れていました。最後に草原先生は,AIによる地図分析を踏まえながら,「地図はすべての情報を載せないこと,省略することで,逆に伝えたいことをはっきりさせる強調をすることができる」とまとめて授業を閉じました。

地域を越えて学ぶことの意味

今回は,東広島市の4つの中学校に加えて,北海道の洞爺中学校が参加したことで,生徒たちは,自分たちとは異なる地域で生活する人に向けて情報を伝える活動の難しさをリアルに考えることができました。とりわけ,終結部で「北海道にないお店」がランドマークとして十分に伝わらなかった場面は,地図を作る側の当たり前が,読む側にとっては必ずしも当たり前ではなく,地図を介したコミュニケーションの難しさに気づく機会となりました。

本実践は,地図を通して地域を調べるだけでなく,その地域を知らない他者に向けて,どのような情報を選び,どのように伝えるのかを考える学習となりました。広域交流型オンライン学習では,今後も地域を越えた出会いと対話を通して,自分たちの地域を見直し,他者と共に生きることを考える授業をデザインしていきます。

この授業実践の関係者

授業実施者Ch1:草原和博
授業実施者Ch2:大谷哲也,中西美里,宮﨑颯太
授業補助者:各中学校での授業担当教員
広島大学からの中継:神田颯
福富・豊栄からの中継:三井成宗
学校技術支援担当(東広島市内中学校):上中蒼也,小笠原周哉,川本吉太郎,佐古優花,梶山彩佳
事務局機器担当①(広島大学):草原聡美,長野睦生
事務局機器担当②(東広島市立福富中学校):宮本侑弥,宇ノ木啓太

この記事を書いた人
SIP staff
三井・川本・宇ノ木・神田

「デジタル・シティズンシップ・シティ:公共的対話のための学校」プロジェクトメンバーである三井・川本・宇ノ木・神田が更新しています! ぜひ、本記事を読んだ感想や疑問・コメントをお寄せください!