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【Season3突入!】【みなみうら奮闘記3 vol.1】多言語看板の中にある「悩ましさ」から……

2025.05.09

南浦 涼介(広島大学)

「みなみうら奮闘記」ついにSeason3に突入!

さて,2024年度に3回行った「多文化共生」実践も3周目になりました。3周目ともなるともうベテランの域に達した余裕を醸し出し,汗をかく奮闘記にはならないかもしれません(嘘です)。

ただ,たしかにやや落ち着いた気持ちで教材を考えたよなあと思っています。

街のなかにある多言語看板

今回,実践の大きなテーマは「多言語看板」です。どういうものかというと,こんな看板のやつです。

なんとたくさんの言語が並んでいるのでしょう! 上から,日本語,クメール語(カンボジア),ベトナム語,中国語,スペイン語,英語……で,すべて「バイク進入禁止」とかかれています。ここは神奈川県横浜市の近くにある団地で,僕が昔撮影した写真です。この団地には外国の人がたくさん住んでいるんです(誤解がないようにいうと,別に僕は一度もここでバイクが進入しているシーンを見たことはありません)。長い時間をかけて共生の取り組みがつくられてきた地域でもあります。

多言語看板がもつ「難題」!

ところで,こうした看板,ここまでたくさんの言葉が並ぶものは珍しいかもしれませんが,日本語と英語だけでなく,もう1つくらいの言語でかかれた「多言語」のものは時折見かけるように思います。

SNSなどでは,たまにこうしたものが「日本語と英語だけでいい!」という意見から,「いやいや,外国人だから英語が読めるわけではないよ」「お隣の韓国でも韓国語・英語表記だけでなくて,日本語の表記もあってほんとうに助かった」という話まで広くあります。「英語だけで良いのかどうか」という問題だけではなく,ここには「いくつの言語を載せればいいのか」という問題が横たわっています。

心情的には「たくさん載せて,色々な人がわかるようにしていきたい」というものがある一方で,看板には物理的限界があって「いくつかしか載せられない」ということが起きます。最近は,電子掲示板なども駅で見かけます。これなら無制限だという気もするのですが,あまりにたくさんの言語を載せると,「自分がわかる言語」の表示がめぐってくるまでじっと待たなければならない……

ことほどさように,「多言語」をめぐる街の表記には「大切さ」と「悩ましさ」がいつも併存しています。

子どもたちにとってどうしたら「自分ごと」になるだろう?

この問題は,子どもたちが「共生」を考えるにあたって「大切さ」と「悩ましさ」をめぐって考えることは授業の大きなテーマになるなと思っていました(元ネタは,前任校でときどき教養教育の授業で使っていました)。ただ,問題はこうしたことが子どもたちにとって「自分ごと」として捉えていけるかどうか。ただクイズのように「何語だろう?」「おもしろいねー」では「私たちの問題」にならない。

さて,ネタは面白いけれど,どうやったら自分ごとになっていくか。第3弾はこの点から授業を練っていくことになりました。

この記事を書いた人
Ryosuke Minamiura
南浦 涼介

2023年の春に広島大学にやってきました。「先生」の仕事は23年目,大学の先生の仕事は14年目,広島大学の先生の仕事は2年目の古米のような新米です。授業や多文化共生の教育の仕事が大好きですが,ラーメンも好きです(最近控え中)。