指導案・教材・YouTube動画
授業の概要
2026年2月4日(水),東広島市内小学校4校8学級(小谷小学校,板城西小学校,三津小学校,龍王小学校),竹原市内小学校2校2学級(荘野小学校,仁賀小学校),広島市立基町小学校1学級,SSR,フレンドスペース,スクール“S”,島われんきゃハウス,あすなろの子どもたち,計260名が参加し,遠隔授業を実施しました。授業の主題は「わたしたちのことば─あなたの町にはいくつの言葉が必要だろう?─」。本授業では,バスの行き先案内を題材に,自分のまちの言語表記の在り方を考察しました。授業の全体進行は広島大学の南浦涼介准教授と草原和博教授が担当し,各教室の進行は学級担任が担当しました。


導入:外国人市民のお困りごと
授業の導入では,バスの行き先案内表示についての確認からスタート。多くの子どもは普段の生活の中で案内表示を見たことがありました。ここで,南浦先生から「外国の人がこのバスに乗った時に何か困ったことが起きないか」と問いかけました。子どもからは,「英語で書いてないから料金や行き先が分からないのではないか」という予想があがりました。
実際,外国人市民はどう考えているのでしょうか。続くインタビュー動画では,外国人市民が「お金の払い方がわからない」「漢字がわからない」「ひらがなもわからない」と話し,バスでのお困り感を共有してくれました。また,イギリスに留学経験のある先生が,バスの乗り方や省略された案内表示(駅は~sta.と表記される!)で困ったという実体験を共有してくれました。インタビューやエピソードを通して,子どもが課題のリアルさを実感していったところで,学習課題「誰もが困らずにバスに乗るには,何語で案内すればよいか」が提示されました。


展開1:バスの案内に何語を載せる?
展開1では,提示された学習課題をもとに,各学級で話し合いが行われました。まず子どもに課題に対する意見を聞くと,「そのまちに住んでいる人の言葉を載せるといい」という意見が寄せられました。
ここで,南浦先生は東広島市の外国人が読める言葉や東広島市の外国人市民の数についてのグラフを提示。東広島市には,英語や日本語,中国語を読める人が多数いますが,その他にもベトナム語やインドネシア語など話す人が少ない言葉もあることが確認されました。具体的なデータを見た子どもに改めて意見を聞いてみたところ,「全部載せる」「全部載せるのはむりだから,日本の近くの国の言葉だけ載せる」「英語が分かる人が多いから,英語を載せればよい」といった様々な意見を述べられました。
意見が出てきたところで,バス会社の職員との中継を通して,現在の言語表記が採用されている理由をインタビューしました。職員の方は,「芸陽バスでは,日本語と英語を載せている」「全部の言語を載せたいが,案内のスペースが限られているので字が小さくなってしまうのと,英語以外の言葉に詳しい社員がおらず表現が正しいのか分からないので,実際には難しい」と教えてくれました。
バス会社の説明を受けて,ICT端末を用いて「スッキリ!納得できる」「モヤモヤ…納得できない」のいずれかの立場を意見表明するアンケートを実施しました。結果は,スッキリ派が61%,モヤモヤ派が39%。バス会社の方の説明に納得した人が多数でした。子どもからは,「載せる言語の数には限界があるからスッキリ」「中国語が読める人が多いので中国語が載っていないのはモヤモヤ」と述べました。このように,二言語表記の案内の適切さについて,資料やバス会社のお話をもとに,子どもたちは意見を深めていきました。




展開2:多言語表記の事例に触れる
前半で「すべての言語を載せるのは難しい」という制約に直面した子どもたちは,次に「それでも伝えたい」と工夫を凝らしている取り組みに目を向けました。まずは,東広島市の外国人市民の生活を支援するコミュニケーションコーナーの取組を中継。担当者の方は,「ランドセルのプレゼントの案内には日本語・英語・中国語・ポルトガル語・ベトナム語が載っている」「文字が小さくてもちゃんと伝えたいので5言語にしている」と教えてくれました。
続いて,広島市の基町小学校の校内案内が校長先生によって紹介されました。校長室や事務室の表示が日本語,英語,中国語といった3言語で示されていました。校長先生は「基町小学校には6つの国から友達が来ている」「外国から来た友達が困らないようにしている」「ベトナム語やネパール語を書けないので,案内やプリントも3つの言葉で作っている」と説明しました。
これらの事例を聞いた子どもたちは,「たくさん載せたいけど,必要度の高いものだけ伝えることをしていた」「外国から来た人にも伝えたいことがあるから」「日本語しかないと勉強したいけど不安な気持ちになる」といった気づきや感想を出しました。このように,子どもは二つの事例を比較しながら,「伝えたい人がいて,伝えたいことがあるから言葉を載せる」という視点を学ぶことができました。


終結:新たなバス表示のアイデアを提案しよう!
終結では,「伝えたい人がいるけれど,スペースなどの制限もある」というこれまでの学びを踏まえ,子どもたち自身が新たなバス表示のアイデアを考える活動を行いました。各学級では,具体的な工夫を検討し,スプレッドシートに入力。子どもたちからは,「スマホをかざせば自分の知っている言葉で読めるアプリをつくる」「それぞれに席にタブレットを置いて自分の読める言語を選べるようにする」「外国の人専用の椅子をつくって,いろいろな言葉を示す」「それぞれのバス停に番号を振る」など,多様なアイデアが出されました。子どもからはICTや数字を活用するといった柔軟な発想が提案されました。
続いて,コミュニケーションコーナーとバス会社の職員さんから,子どもたちの提案に対して感想を頂きました。コーナー職員さんは「バスの椅子のスペースを活用するのはすごいアイデア」と感想を述べ,バス会社の職員さんは「芸陽バスでは一部路線で番号を振っていて,今後ほかの路線にも広げていく予定」と展望を語りました。また,最後には広島市内の観光周遊バス(めいぷる~ぷ)に草原先生が乗車し,生中継で「番号」と「英語」で行き先を示したり「色」で路線を区別したり,これから止まる停留所を「線」で表す工夫を紹介しました。このように,子どもたちは自分たちの提案が,実際に社会でも検討・実装されていることを知りました。南浦先生は,「実はバスの中でお困りなく乗るための工夫がある」「皆さん考えた案がこれからもしっかりと使っていけるような形にしていけたらよいですね」と語りかけ,授業のまとめとしました。




多文化共生社会に向けて
本授業を通じて,子どもたちは「公共の場ではどのような多言語表記にするとよいか」という課題に向き合いながら,実際の資料や事例,関係者の声を手がかりに,新たな多言語表記を考察・提案することができました。「スペースに制限↔できるだけ多くの言語を入れたい」「言語で伝えたい↔言語以外の方法でも伝えたい」という立場をめぐって葛藤しながら,多文化社会のおける公共空間をデザインすることができました。また授業中に,外国にルーツをもつ子どもが「日本語しかないと勉強したいけど不安な気持ちになる」と自身の声を発信する姿も見られました。本プロジェクトでは,引き続き多文化社会の公共的課題を考える授業をデザインし,実践してまいります。
授業実施者(Ch1):南浦涼介,草原和博
授業実施者(Ch2):大谷,近藤郁実,井手歩実
授業補助者:各小学校での授業担当教員
芸陽バスからの中継:宮本侑也,宮﨑颯太
コミュニケーションコーナーからの中継:上中蒼也
学校技術支援担当(東広島市内小学校):神田颯,手嶋高嶺,川本吉太郎,晴佐久優花,三井成宗,長野睦生,森涼夏,佐古優花,藤本真奈,横田亜美,濵田莉緒,圓奈勝己,野津志優実,松岡佑奈,大畑澄佳
学校技術支援担当(広島市内小学校):小笠原周哉
学校技術支援担当(竹原市内小学校):湯川茉琴,新谷叶汰
事務局機器担当①(広島大学):草原聡美,井戸浩太
事務局機器担当②(板城西小学校):宇ノ木啓太,山口祐樹,石原健人
「デジタル・シティズンシップ・シティ:公共的対話のための学校」プロジェクトメンバーである三井・川本・宇ノ木・神田が更新しています! ぜひ、本記事を読んだ感想や疑問・コメントをお寄せください!
-
授業実践
-
授業実践
-
授業実践





